身寄りのない人らが死後に残した「遺留金」が宙に浮いている。朝日新聞が20政令指定市と東京23区を対象に調べたところ、39自治体で計約11億4200万円にふくらんでいた。超高齢化に伴う「多死社会」の到来で今後も増える見通しで、各自治体は保管の手続きや引き取り手捜しに追われている。

 引き取り手がいない故人の現金については、自治体が家庭裁判所のもとで弁護士らに債務整理を依頼。清算手続きなどにかかる費用を差し引いた分を国庫に入れる制度になっている。

 遺留金が30万~100万円以上あれば、多くの自治体は法的手続きを進める。だが、弁護士らへの報酬をまかなえない少額の現金についての扱いを定めた仕組みはない。このため、自治体は引き取り手が現れるときに備えて手元に保管してきた。その額が近年、ふくらみ続けている。

 ログイン前の続き朝日新聞が20政令指定市と東京23区に累積額(原則として昨年3月時点)を尋ねたところ、39自治体で計11億4225万円に達していた(遺留金なしの浜松市千代田区・港区、個別集計せずの横浜市を除く)。最多は大阪市の7億2211万円で、北九州市(6350万円)、神戸市(4439万円)、川崎市(3856万円)、名古屋市(3166万円)と続いた。

 身寄りがなく生活保護を受けて暮らす人が少額の現金を残して亡くなるケースが多いが、高齢化や家族関係の希薄化をうかがわせる回答もあった。新宿区は「親族が要介護状態で引き渡しに苦慮する場面がある」とし、広島市は「(故人と)関わりたくないと受け取りを拒まれたことがある」と答えた。

 引き取り手捜しは自治体の重荷になっている。岡山市は「戸籍調査に手間と労力がかかる」とし、江戸川区は「親族と疎遠な人が多く、なかなか連絡が取れない」と回答。さいたま市は国に「簡易で具体的な処理方法を示してほしい」と求め、相模原市は「少額の遺留金は国や自治体の歳入になる制度に改正する必要がある」と提案した。