◆ヤクルト5x―4DeNA(12日・神宮)

 今季一番の大歓声が村上に降り注いだ。ヤクルトが9回に1点差に追い上げてなお無死一塁。山崎の低めへの初球ツーシームを振り抜くと、劇的な打球はバックスクリーンへ飛び込んだ。5試合ぶりの25号2ランは史上最年少を更新する19歳6か月でのサヨナラ本塁打。力強いガッツポーズでダイヤモンドを一周すると、心地よい祝福の水を浴びせられた。

 巨人・松井秀喜以来の10代サヨナラ弾は野球人生で初めての経験。「不思議な感じですね。あれで終わっちゃうんで」と興奮は収まらない。多くの人の支えでこの日の主役に輝いた。同郷のレジェンドもその一人だ。11日の巨人戦前に平成唯一の3冠王、松中信彦氏から軸足の使い方や打席での構えについて助言を受けた。「ありがたいです」。いつも気にかけてくれる優しさが身に染みた。

 この日は行わなかったが、不思議な儀式が幸運を呼んでいる。いつからか、勝負所の打席に向かう前のベンチ裏で「剛史さん(上田)、チューして〜!」とほっぺに唇を要求。直後に3発をマークした実績があり「上田さんのお陰と言っても過言ではない」と効果はてきめんだ。

 食欲も怪物級だ。6月の遠征中にバレンティンに誘われて出かけた牛タン料理店では、全員で合計16人前に加え、大盛りライス2杯を平らげた。「いろんな面で迷惑ばかりかけていますし、勝つことでみんなで喜べる」。高卒2年目以内では西武・森、セ・リーグでは巨人・坂本勇以来のシーズン規定打席に到達。感謝の全てが恩返しの殊勲弾に込められていた。(田島 正登)