「練習だけが吹奏楽ではない」 部活時短の影響ここにも
2018年10月22日12時19分
週休2日に――。スポーツ庁が今春、運動部活動の指導ガイドラインをまとめ、文化部についても文部科学省がガイドラインの作成を検討中だ。今大会の出場校にも、その波は迫る。
今大会に中高5校が出場した千葉県。うち2校がある柏市が6月、市立中学校の部活動の時間短縮を打ち出した。20日の中学校前半で金賞に輝いた酒井根中吹奏楽部も時短中だ。
従来の平日休み1日に加え、朝練休みを1日増。週末は約60分短縮。来月以降は休みを増やす予定だ。
楽器の運び込みなど準備や片づけも大がかりな吹奏楽。顧問の板垣優麻教諭(27)は「もともと平日は正味1時間練習できればいい方」と話す。生徒、先生ともに忙しく、全員そろうのも難しい。
井上可奈子部長(3年)は「時間が足りなくて焦りましたが、やれることをやれるだけつめこみ、すべて出し切れました」と笑った。「よかった。影響を感じるのは、これからかもしれませんが」と、板垣教諭は汗をぬぐった。
福井県立武生商高は、効率的な練習を続けながら6年連続出場を果たした。
原則的に平日は午後6時半に終了。朝練、昼練などはなし。週末の練習は午後4時半まで。ラジオ体操から呼吸法、ロングトーン、基礎練習、掃除に至るまで、演奏に「つなげる」ことを意識する。
最初は練習の短さに驚いた宮田美輝部長(3年)は「『つなげる』意識を持つと上達が早い」と話す。
しかし、効率化が正解とは限らないと顧問の植田薫教諭(60)は言う。「教育ですから、初心者の数やモチベーションの高さなど、生徒の状態によってやり方は違う。一つのルールにはめこむのは難しいでしょう」
伝統芸能の型を教えるように、時間をかけて初心者を高い水準に導く指導者もいる。
「そもそも音楽は時間がかかるもの」と話すのは、小中学校でも指導経験がある習志野市立習志野高の顧問、石津谷治法教諭(59)だ。「最初は毎日少しでも触ることが必要なのが楽器です。個々の技術を磨いたうえで今度は合わせる練習。全員が息を合わせなければ一つの音楽は奏でられない。音楽づくりは人間関係づくりです」
さらに懸念されるのが地域活動への影響だ。同校吹奏楽部では、地域行事や福祉施設での演奏、他校からの依頼による合同練習を合計年80回ほどしている。
やりがいや喜びにつながるが、その多くが週末だ。週末が1日休みになると、ほとんどできなくなるという。石津谷教諭は「コンクールの練習だけが吹奏楽ではない。部活動が担う教育の『育』のために必要な活動を大切にしていきたいんです」と話す。
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