トヨタ自動車が強いハイブリッド車(HV)の売れ行きが、欧州と北米で明暗を分けている。ディーゼル車の不正があった独フォルクスワーゲン(VW)の地元、欧州では絶好調。一方の北米では原油安がHVの燃費性能を埋もれさせ、苦戦を強いられている。

 トヨタは27日、HVの欧州での1~8月の販売が前年同期より45%多かったと発表した。販売台数は17万9千台で北米とほぼ並び、通年で北米を初めて上回る可能性も出てきた。

 欧州の1~8月では、新型を出したプリウスが昨年の2倍の1万2千台超の売れ行き。小型車オーリスやSUVのRAV4も、HVタイプが最も人気だった。

 トヨタ幹部が「急にHVが伸びた理由はよく分からない」と話すのに対し、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏は「昨年発覚したVWの不正の影響で、欧州で主流のディーゼルの競争力が落ちたのが一因」と分析する。

 ログイン前の続き一方の北米では、ガソリン安で需要が大型車に移り、エコカー全体が振るわない。プリウスは、昨秋の新型初公開の舞台を米国にして力を入れたが、8月までの売れ行きは前年同期比9・6%減の6万9千台だった。

 日本では盤石に見えるエコカーとしての地位も世界的には安泰とは言えない。規制先進地の米カリフォルニア州では2017年の後半以降、「ゼロエミッション車」の対象からHVが外れる。世界最大の中国市場でも「新エネルギー車」と呼ばれる補助金の対象に、HVは入らなかった。

 HVよりも電動化を進めたプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)が、優遇される流れが強まっている。

 中西氏は「長期的にはEVやPHVの競争力が欠かせない。トヨタはHVで培ってきた技術を生かすだろうが、これらは欧州勢も強く、楽勝とはいかない」と話す