トヨタ自動車は14日、昨年末に市販を始めた燃料電池車(FCV)の世界販売台数を2020年をめどに年3万台以上に伸ばすとの目標を発表した。今年の約40倍の水準。ハイブリッド車(HV)の販売も今より2割増やす。地球温暖化対策としてエコカー普及を加速させる計画だが、水素ステーションの整備やコスト削減などログイン前の続きの課題が解決できるかは不透明だ。

 

 50年に向けた新たな環境計画に盛り込んだ。新車が走行時に出す平均の二酸化炭素(CO2)排出量を、10年比で9割削減する目標を設定。その実現に向けてまず、トヨタが他メーカーに先行したFCVとHVの販売台数を「公約」した。

 FCVは、燃料の水素を空気中の酸素と反応させてできた電気でモーターを回して走る次世代エコカー。昨年12月に世界初の市販車「ミライ」を発売した。今年の計画は約700台。納車待ちが3年以上となる売れ行きを踏まえ、17年に3千台への増産を決めていたが、その3年後をめどに販売を3万台以上に増やす。

 伊勢清貴専務役員は、「地球の温暖化を食い止めるには、エコカーの普及は一刻の猶予も許されない」と意気込みを語った。

 トヨタが97年に世界で初めて量産を始めたHVの販売も、昨年の約125万台から20年までに150万台に増やす。価格の高さが敬遠されて新興国では苦戦していたが、今秋以降に新開発の低価格車を中国に投入し、拡販をはかる。

 一方、工場では省エネ設備の導入を進め、CO2を減らす。生産1台当たりの排出量を01年と比べて20年に半減、30年に3分の1に減らすことをめざす。

 

 ■インフラ整備が課題

 FCVの普及計画に対し、業界内では「まさか数値目標を掲げるとは」(国内大手社員)と驚きの声が出ている。HVの場合、トヨタの販売が年3万台に達するのに発売から4年かかった。FCVではこれより2年遅い6年後の達成を見込むが、ハードルは多い。

 ミライの価格は約720万円と高級車並みだ。普及に欠かせない燃料を補給する水素ステーションも、先行する国内でも大都市圏に計約30カ所あるだけ。国は今年度末に100カ所に増やす目標だが、実際は約80カ所にとどまる見通しだ。

 現在FCVを市販するのはトヨタ1社で、具体的な発売時期を表明している他メーカーも来春予定のホンダのみ。まだ採算が見込めない水素ステーションへの投資に、業者の多くは二の足を踏んでいる。野村総合研究所の風間智英氏は「FCVを売る『仲間』が広がるかが、目標達成のかぎを握る」と指摘する。

 あるトヨタ役員は今回目標を掲げた狙いを解説する。「トヨタが量販を約束することでインフラ整備を促す。まさに『清水の舞台から飛び降りる』気分だ」(