jk1234萩原義雄
「げっかびじん【月下美人】」歳時記のことば
「月下氷人」を字音読みした語例では、太宰治『人間失格』〔一九四八(昭和二三)〕第三の手記「自分の更生の大恩人か、月下氷人のやうに振舞ひ」と見えている。この意味は、「縁結び」=仲人の意です。古くは平安時代末の『梁塵秘抄』日本古典文学全集〔306頁〕に、
449 月も月立つ月ごとに若きかなつくづく老いをするわが身何(なに)なるらむ
その頭注記に、「婚姻の仲介を業とする女か。㈡未詳。→398注。㈣近江の野路の玉川とする説があるが、未詳。㈤中国の故事にも「月下氷人」「月下翁」などの語があって、結婚と月との関係は深い。」と記載している。
では、花の名前として「月下氷人」〈a matchmaker; a go-between〉ならぬ「月下美人」〈a Queen of the Night〉の名として、いつどのように命名されたのか?先ず、此の花の原産地がメキシコで、西欧を交いして日本国に近代明治時代に渡来したサボテン科の多年草。クジャクサボテンの仲間で、茎は平たく、葉状。夏の夜、白色で香りのある大花を開き、夜七時ころから開き始め、朝までにはしぼむ。別名「白孔雀。学名はEpiphyllum oxypetalum」と云います。山口誓子『方位』〔一九六七(昭和四二)年〕に昭和三三年刋「今宵咲き月下美人の今宵萎ゆ」という句が知られる。「ヒャウジン」と「ビジン」の聲音が近いこともあってか、此の花が白く優雅で芳香性も加味されて「月下」+「美人」と合成語化されたと見ている。また、花が閉じた後は、天ぷらやおひたしなどにして食べることができ。渡来当時から薬膳花としても利用されていたようで、今も台湾では薬膳料理として食している。
【鑑賞寸言】昨夜から今朝にかけて家で育ててきている「月下美人」の花が咲き始め、朝方萎んだと駒澤大学日曜公開講座ランニング健康教室〈今季中止〉の生徒さん三條正人さんから写真付きでいただいた。これを機に此の花について書きとめてみたものである。リモート講義演習で取り上げた牧野富太郎『原色牧野植物大圖鑑』に、仙人掌科の「月下美人」について紹介されています。この時季ということもあり、執り上げさせていただいている。この最後に書いたのだが薬膳の花ということであり、免疫力を高めていくとき、少しでも参考になればという思いもあって紹介しました。萩原義雄識
◆牧野富太郎植物館では、このような催しの記事がありましたので取り込んで紹介しておきます。
人にもいろいろな性格の人がいるように、植物にもいろんな暮らしぶりがあります。植物はおしべの花粉が他の花のめしべに到達して子供を授かるんです。赤ちゃんとしての種を授かるんです。夜咲く花は夜活動する昆虫に受粉を手伝ってもらうために夜に花を咲かせるんです。
虫を呼ぶためいい香りを放つ植物もあります。で、だいたい夜目立つように白い花が多いです。ツキミソウ・カラスウリ・月下美人やパラグアイオニバスなどどの花も幻想的です。それらの花をガイドが案内していきます。20日(土)27日(土)にやります。
高知県立牧野植物園学芸職員展示デザイナーの里見和彦さん「夏のイベント 夜の植物園」より所収。
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