レビー小体型認知症
この病気はどのような経過をたどるのですか?
受診される診療科によって患者さんのタイプは異なるように思います。私たちのような神経科精神科には、認知障害、認知機能の変動、幻視が初めに現れたり、目立ったりする患者さんが多く来院されます。一方、神経内科にはパーキンソン症状の強い患者さんの受診が多いと思います。経過は、3徴のどの症状が目立つかによって異なりますが、アルツハイマー病や血管性認知症より進行は速く、全経過は10年未満とされています。
広く用いられているレビー小体病の重症度分類はありませんので、ここでは、これまでの研究論文、私たちやその他の専門家の観察をもとに重症度分類をしてみました。
初期
はじめに、便秘、嗅覚異常、うつ症状、レム睡眠行動障害が現れることが多いといわれています。その後、段取りの悪さ、物忘れ、立ちくらみ(起立性低血圧)が出現し、さらに3徴(①認知機能の変動、②繰り返し出現する幻視、③パーキンソン症状)が現れます。私たちのような神経科精神科に来院される患者さんでは、認知障害、認知機能の変動が目立ってきます。ただしこの時期では、認知機能が保たれている時間が長く、見当識や理解力も保たれ、周囲の人と心を通じ合わせることにも問題ありません。物忘れも軽く、あまり目立たないことが多いです。幻視、錯視(ハンガーに掛かった服を人に見間違えたり、壁のシミを虫に見間違えたりする)などの訴えは増えてきます。その他の幻聴、妄想も徐々に目立ってきます。たとえば、自分の家にいるのにここは自分の家ではないと言ったり、家族を偽物だと言ったりします。被害妄想、嫉妬妄想を伴うこともあります。
中期
パーキンソン症状が強くなり、歩行が困難になってきます。また、認知機能の悪い時間帯が長くなってきます。つまり、見当識や理解力が落ちて、周囲の人と心を通じ合わせにくい時間帯、記憶の悪い時間帯が増えてきます。また良好な時間帯でも能力が低下してきます。幻視、妄想などの対応に困るBPSDも顕著になります。日常生活上の介助支援が必要になってきます。
後期
パーキンソン症状、認知障害がさらに悪化し、日常生活に常に介助が必要になります。
車椅子の利用を余儀なくされる方が多いです。嚥下障害も目立ってきます。認知の変動は徐々に目立たなくなり、常に悪い状態となってきます。
このサイトでは、寝たきりになってしまう最重度期を除いた、初期・中期・後期について説明しています。
早期に適切な診断とケアプランを立てることで、被害妄想などの精神症状や、行動異常をある程度予防することができますし、先を見越して日常生活動作(activities of daily living; ADL)への支援を行うことができます。
母は後期に入って来たのかも知れない
もう 歩けるようににはならない…・かも
この病気にはどのような治療法がありますか?
残念ながら、レビー小体病を完全に治したり、進行を止めたりする薬はありません。
ただ、認知機能の低下や変動、幻視に対して、
アルツハイマー病の治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬が有効な場合があります。
また抑肝散という漢方薬も幻視、気分の不安定さなどに対して効果があるという報告があります。
ただしこれらの薬は2012年4月現在、レビ一小体病の治療薬として保険適用を得ていません。
パーキンソン症状に対しては、パーキンソン病の治療薬を用います。
出典:認知症知って安心!症状別対応ガイド( メディカルレビュー社 )
監修:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 教授
武田雅俊
著者:大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
数井裕光 杉山博通 板東潮子
抑肝散は2018年現在では保険適用されています
私の母も飲み続けていますが 顆粒状しかないのが辛い