は、
民法の消滅時効が最大の争点であるかのような書きぶり。
或いは、行訴法の問題であるかような書きぶり。
しかし、実際には、
裁判所に釈明義務や法的観点指摘義務が生じるか否か、
という民事訴訟法の問題。
そもそも、
釈明とは、裁判所が口頭弁論の期日又は期日外において、 訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者(原告、被告とか)に対して、
「これって、何?」
「これって、どういこと?」
「何言ってるの?」
などと
問いを発し、又は
「この書証、頁が抜けてるけど、どうなってるの?」
「で、その人、ここに呼んで、証人尋問させたいの?」
「君、紛争類型別、忘れちゃったの?」
などと
立証を促す(民訴法149条1項)こと。
釈明の目的は、
弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し,訴訟関係を明らかにし,できるだけ事案の真相をきわめることによって,当事者間における紛争の真の解決をはかること
(最判昭和45年6月11日民集24巻6号516頁https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55134)。
つまり、スムーズに審理を進めつつ、深く掘り下げるため。
冒頭のケースでは、
被告に
「消滅時効の援用の抗弁、出すの?出さないの?」
くらいの問いかけ、
という内容となっていたでしょう
(いうまでもなく、実際の釈明は、もっとカッチリした物言いですけど)。
(いうまでもなく、実際の釈明は、もっとカッチリした物言いですけど)。
(争いはあるでしょうけど、「消滅時効を援用しますか。援用とは……」は流石にストレート過ぎるし、過保護過ぎる。当方ならば、「なんでやねん!」と怒鳴るだろう)。
さて、
釈明権は、裁判所の権能。
その行使は、裁判所の裁量。
使うも使わぬも、裁判所の勝手……が建前。
が、
さすがに「何も言わない」はダメでしょ、という状況もあり得る、
というのが民訴法の判例。
つまり、「一定の場合」には、
裁判所の釈明権を行使する義務・釈明義務が生じる。
しかも、「一定の場合」には、(どの抗弁を主張すべきかなどの)法的な事柄についても釈明権を行使する義務(法的観点指摘義務)がある。
事実周りは釈明義務、法律関係周りは法的観点指摘義務。
(「一定の場合」については、最判平成7年10月24日https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=76129 参照。その範囲がとてもフワフワしていることは、文面から分かるでしょう)。
前述の「消滅時効の援用の抗弁、出すの?出さないの?」を、
言う義務(法的観点指摘義務)を裁判所が負っていたならば、
冒頭のケースは、高裁で破棄(民訴法149条違反ゆえ、
同法306条に基づく)差戻し(同法307条本文)となるでしょう。
同法306条に基づく)差戻し(同法307条本文)となるでしょう。
その際、年齢がどの程度影響するか、は気になります。
ダッテ、フワフワ、フワフワしているから。
釈明義務・法的観点指摘義務の発生する場合が……。
ちなみに、神戸地判平成28年2月23日判時2317号111頁https://lex.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-060841492_tkc.pdf
は、冒頭のケースと同じ消滅時効の援用の抗弁に対する法的観点指摘義務が争点でした。ただし、年齢は不明。
(積極的釈明・消極的釈明の違いについては、省きました。冒頭のケースでは、釈明しなかった事の可否(釈明義務・法的観点指摘義務の有無)が問題でしたから。)
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