「世界で船員数十万人、上陸できず 新型コロナで渡航制限」
「船員」と聞いてどういう人々を想像しますか。
双眼鏡で他船の監視、
海図で航路を検討、
船にとって初の寄港地で花束と記念品を贈られる
……
そういう高給取りだけを念頭に置いていれば、
国連事務総長は
人道危機だとして、国連加盟各国に対し「船舶乗務員らを『重要労働者』と公式認定し、要員の安全な交代を保証する」ことを呼び掛けた。
という反応には出なかったでしょう。
船員という職業は、発展途上国にとって、稼げる職業。
そして、過酷な職業。
国際運輸労連は2007年、
にて、クルーズ船内を、
クルーズ船に勤務する114,500人の乗組員の7割は、ホテルおよびケータリング(飲食)部門の従業員である。これらの裏方の地味な職種は、発展途上国の人々に与えられる。先進諸国出身の乗組員はクルーズ船の仕事は、世界を見る機会が持てる一種の幕間と考えている。アジア、中南米、カリブ海地方、および東部ヨーロッパなどの、より貧しい諸国からきた乗組員は、自国の惨めな経済的状況のためにやむなく海外に職場を求めた人々である。
船客用甲板より下の区画の労働者にとって、船内は立ち入り禁止区域である。入港中には、高い賃金を得ている乗組員は、会社の提供するバスを利用して市街地の船員用インターネットカフェに向かう。低賃金の船員たちは、地域の教会が運営する船員ミッションを訪問し、ボランティアの用意した無料の食事と無料のインターネット・コンピュータを利用するのである。
多くの場合乗組員は、自由時間中でも自国語での会話を禁じられている。これは彼等が個人的意見を交換し、徒党を組むことを防止するためである。高い職位の船員は、船客の前では英語を使うという規則があるにもかかわらず、自国語で自由に話し合っている。
と記している。
貨物船でも、待遇差はキッチリ付けているものです。
全日本海員組合は、
にてFOC(便宜置籍船)反対の理由として、
なぜFOCに反対するかといえば、第1には、自国の船員に比べ低賃金の外国人船員を自由に使うことができるため、自国の船員の雇用や労働条件に極めて深刻な悪影響があるからです。
日本の例でみても、約2,500隻といわれる国際海運に従事する日本商船隊のうち、日本人船員の乗船を義務づけている日本籍船は120隻にも満たない状態で、残る船舶はほとんどがFOCです。このため、かつては8万人を数えた外国航路で働く日本人船員も、現在では約3,000人になってしまいました。第2には、もともと厳しい規制から逃れるための制度ですから船の建造費も安上がり、安全管理もずさんで、劣悪な労働環境で働く船員の運航技術レベルの低さともあいまって、海難事故の多発や頻発する油の流出事故など「海の無法者」だからです。
外航船の中は、究極のグローバル社会であり、究極の格差社会。
その差を埋める手立ては、ない。
究極のグローバル社会なのに、
労働条件周りのルールは「不毛地帯」
国家の手が届きにくいため、エンフォースメントの充実も望み薄。
そこに現われた新型コロナウィルスと渡航制限。
国家の手が届きにくい船員たちを、直撃。
だから、
「労組・使用者・国家の存在を所与の前提とする」ILOではなく、
「事実上の何でも屋さん」国連事務総長がわざわざ、
しゃしゃり出てくる。
船員たちには、各国家の手が必要です。
国家を動かせる人たちは、各国の有権者です。
積善之家。必有餘慶。積不善之家。必有餘殃。
「易経翼伝」文言伝の「坤為地 初爻」より
積善之家
か。
それとも、
積不善之家
か。
船員たちは、船員を辞めた後、
船員時代に貯めた資金で、
母国にて商売を始める方がそれなりにいる、
と聞いた覚え。
……苦しい日々に得た恩は、忘れ難いものです。お返ししたいと思うものです。
たとえ、ドケチ根性の持ち主であっても。
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