桟橋に降り立ったわたしの横には、
一方的に、かけがえのない人にしてしまった彼がいる。
今までに、これ以上の不思議な感覚を味わったことなどなかった。
それは、強烈な引力としか形容できないもの。
こんなに短時間で、完全に心を許すことができる自分にも単純に驚いた。
そんな自分を野蛮に思う気持ちがまったく存在しないことも、
抵抗なく受け入れられた。
悟りでも何でも、開けそうな感じだった。
先に下船した人たちが、桟橋の途中で足を止めている。
皆、手すりのない木造の桟橋から、
今にも落ちてしまいそうな勢いで、海を覗き込んでいる。
今度のゲストは、ジュゴンだった。
イルカとの遭遇の興奮冷めやらぬ内。
今度は、2頭のジュゴンが手の届きそうな浅瀬を、
それはそれはゆっくりと移動していた。
野生のジュゴンに出会えたこと、
そして、こんなに人間の生活空間の側まで来ることに、なんだか心が潤された。
「ここでは、ジュゴンは、珍しくないの?」
あきれるほどの短期間で、すっかり敬語の呪縛から逃れてしまったわたしは聞いた。
「珍しいこともないけど、こんなに人間の近くに来ることはあまりないね。」
彼も、普通に返す。
「そうなんだ。」
そう言って見上げた彼の顔の横から、乾いた青色の空からの光が注いだ。
それは、イルカに歓迎され、彼に出会い、ジュゴンに遭遇するという
かなりの非日常的な出来事をわずかの間に経験できたことを、
何の疑いもなく必然の流れだと思い込まされそうになる常夏の陽射しだった。
一方的に、かけがえのない人にしてしまった彼がいる。
今までに、これ以上の不思議な感覚を味わったことなどなかった。
それは、強烈な引力としか形容できないもの。
こんなに短時間で、完全に心を許すことができる自分にも単純に驚いた。
そんな自分を野蛮に思う気持ちがまったく存在しないことも、
抵抗なく受け入れられた。
悟りでも何でも、開けそうな感じだった。
先に下船した人たちが、桟橋の途中で足を止めている。
皆、手すりのない木造の桟橋から、
今にも落ちてしまいそうな勢いで、海を覗き込んでいる。
今度のゲストは、ジュゴンだった。
イルカとの遭遇の興奮冷めやらぬ内。
今度は、2頭のジュゴンが手の届きそうな浅瀬を、
それはそれはゆっくりと移動していた。
野生のジュゴンに出会えたこと、
そして、こんなに人間の生活空間の側まで来ることに、なんだか心が潤された。
「ここでは、ジュゴンは、珍しくないの?」
あきれるほどの短期間で、すっかり敬語の呪縛から逃れてしまったわたしは聞いた。
「珍しいこともないけど、こんなに人間の近くに来ることはあまりないね。」
彼も、普通に返す。
「そうなんだ。」
そう言って見上げた彼の顔の横から、乾いた青色の空からの光が注いだ。
それは、イルカに歓迎され、彼に出会い、ジュゴンに遭遇するという
かなりの非日常的な出来事をわずかの間に経験できたことを、
何の疑いもなく必然の流れだと思い込まされそうになる常夏の陽射しだった。