
いつも6月の終盤になると、お仕事が休みの日でお天気の良い日を選んでお墓参りに行きます。自分のやりたいようにやっていた義母とは違って、いつもニコニコと孫たちを見つめていました。
おじいちゃんが入院したと聞かされたのはまだ稚内に住んでいた頃でなかなか会いにも行けず、ましてや冬でしたので毎年の帰省もままならない状態の日々でした。
翌年の春にようやく札幌に転勤が決まって、G・Wに顔を見に行きました。状態が安定してその頃はお家に戻っていました。
義母は息子に「 病人の看護でストレスが貯まるので、外食に連れて行け 」と言っていました。義父は「 いいんだ、いいんだ 」と言っていました。
「 おじいちゃんのご飯はどうするんですか? 」と尋ねました。すると義母は「 桃の缶詰めを買って来て。あ、車で行くなら多目に買って来て。重たいから。 」
えっ?????
他には?
「 桃の缶詰めが食べたいって言うから 」
いやいや、だから他には?
と、思いましたが何せ自分のやりたいようにやっていた義母です。
とりあえず「桃の缶詰め」を買って、外食に行く前に何かスープ的なものなら食べられるかなと思い、材料を探しました。
のどにしこりと聞いていたので、本当に飲み込みやすいものしか食べられないのかも・・・とも思ったからです。
そうしたら「 鶏ごぼうすり身 」を見つけました。これで白菜とか具をたくさん入れるとおつゆだけでもおいしいはず、身体も温まるし!
早速材料を買って帰り、外食に行くと騒いでいたのでおじいちゃんの分と思って小さな鍋に作って義父に勧めたところ、おいしいおいしい、具も食べたいと言うので「 無理しなくていいんだよ 」と尋ねました。
すると、「 食べたい 」というのでよそって食べてもらいました。とても喜んでもらえて、そんな大したものでもないのに、と思いました。
義母は 私が晩ごはんを作ったから外食は行けなくなったね !と言ってその小さな鍋に入ったおじいちゃんに作ったおつゆを全員に配り始めました。
私もまだ車の運転を始めて間もない頃で、同じ市内でも距離がありなかなか会いにも行けず、そんなに日も経たないうちに義父は旅立ってしまいました。
あのすり身のおつゆを「 おいしい、おいしい 」と食べてくれたのが最後の姿となってしまいました。
今でも「 いいんだ、いいんだ 」という義父の声が聞こえるようです。
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