深夜 娘に 泣きながら 電話をかけてしまった
「お父さんはどこにいるの?」
「もう会えないの?」
娘もつらいのはわかっているのに
「大丈夫 居るからね」
「今頃ボニーと楽しく散歩してるよ」
「また会えるよ」
夜中に泣きじゃくりながら電話してくる親というのも 結構なものだ
亡くなった直後は
「お父さんはね 新しいステージに立っただけ」
「痛み 苦しみ つらいこと それからやっと解放されて楽になったの」
「いずれまた会えるから」
そう言っていたのはわたしのほうだった
長い闘病生活で 最後は本当に可哀そうだったから
素直にそう思えた
ずっと傍にいて 命の炎が消えていくのをずっと見ていた
この頃初めて出会った時のことを思い出すんだ
着ていた服とか どんな表情をしたとか
はっきり目に浮かぶんだ
45年も前なのに おかしいね
当たり前のことなんてないんだね
今日と同じ明日がくると思っていたあの頃
些細なことが許せなかったあの頃
どこにいるの?
今はひとり 荒れ野をさまよっている