大豆イソフラボン 5月12日

今やドラッグストアだけでなく、コンビニやキオスクまでもがサプリメントをずらりと並べる時代になった。CoQ10やヒアルロン酸は、爆発的なヒット商品だ。しかし、3度の食事に自信のない人々がお守りのようにすがるサプリメントに、果たしてどれほどの効果が期待できるのだろうかと、私はいつも疑問に思う。医薬品であれば、体内でどのように代謝されどういう効能効果があらわれるのか、主作用・副作用ともに緻密に精査され、高いハードルを超えたものだけが承認され世に出てくるが、俗に言う「健康食品」にそれはない。害もないかわりに、そのまま排出されているものも少なくないのではないかと疑いたくなる。

このほど食品安全委員会・新開発食品専門調査会は、「大豆イソフラボン」を含む特定保健用食品について、安全な1日摂取量の上限を30mg(大豆イソフラボン配糖体のアグリコンの量で換算)とする最終評価案をまとめた。通常の食事も含めた大豆イソフラボン(アグリコン)の1日摂取量の上限を70~75mgとし、食事以外に追加摂取するサプリメントなどの特定保健用食品の上限を30mgと定めたのだ。

大豆100g中に大豆イソフラボン(アグリコン)は平均140mg含まれるが、そもそも大豆イソフラボンは、体に必要な栄養素には指定されていない。それでも美肌などの女性ホルモン様作用を期待して、大豆イソフラボン含有食品は、飛ぶように売れていく。大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンに酷似し、体内で大豆イソフラボンアグリコンに変化して、促進的あるいは競合的に骨粗鬆症・更年期障害あるいは前立腺ガンや乳ガンの予防作用を発揮すると考えられている。しかし、過剰摂取により、ホルモンのバランスが崩れたり、逆にガンを誘発する可能性もあることから、食品安全委員会は慎重な検証を重ねてきた。

平成16年に特定保健用食品としての許可申請された3品目「イソフラボンみそ」「オーラツヘルスタブレット・カルシウム&イソフラボン」「大豆イソフラボン40」について健康影響評価を行った食品安全委員会は、日本では過去に大豆イソフラボンを濃縮強化して摂取した経験がないことから、英・米・仏などの検討状況も踏まえ検討を重ね、大豆イソフラボン(アグリコン)の健康影響発現量を150mg/日摂取(閉経後女性が、大豆イソフラボン150mg錠を服用。60ヶ月時点で子宮内膜増殖症発症の割合が有意に高かった。)と定め、その1/2の70~75mを1日の安全な摂取量の上限とし、日常の食事を加味して、特定保健用食品である大豆イソフラボン(アグリコン)の上限摂取量を30mg/日と定めるに至ったのである。

妊婦及び胎児においては、動物実験で有害作用が報告されていることと、大豆イソフラボンのトポイソメラーゼII阻害作用(転座や再配列等の変異など遺伝子の異常)に鑑み、乳幼児及び小児においては、その生殖機能が未発達であることを考慮し、いずれも特定保健用食品として大豆イソフラボンを通常の食事に上乗せして摂取することは推奨できないと結論付けた。

どんなものでも、過ぎたるは及ばざるが如しで、摂り過ぎは禁物だ。大豆イソフラボンについては、生体内での作用をなまじ有するが故に、健康影響評価がなされ上限値が定められることとなった。逆に言うと、上限値が検討されないサプリメントの有用性の真偽のほうが、よほど問題なのではないだろうか。

日本人の食生活に欠くことのできない「大豆」に含まれる大豆イソフラボンについて、国が正式に健康影響評価を行った意義は大きい。次は是非とも、正式に食品安全委員会の場で、「錆びた脂」である牛乳の有害性についても検討をして欲しい。小児のアレルギーの増加など牛乳による健康阻害は、看過できる余地を既に超えている。

旬の食材をバランス良く取り入れた手料理が並ぶ食卓を、家族が笑顔で囲めば、これ以上の良薬はない。健全な食卓に、サプリメントは必要ない。もとより、「毒にも薬にもならないもの」を摂取する必要性など、まったくない。どんなものを摂取するかで、60兆の細胞の行方は決まる。ガン対策の中心は、ガンにならない食生活の勧めでなければならないのだ。どういう食を選択するかで、その人がどんな生き方をするかが見えてくる。大豆イソフラボンに上限値を定めることは、私たちが求める真の食育への第一歩だ。私たちは、口にするすべての食品について、その功罪を噛みしめながら食べていかなければならないのだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )