米国産牛肉問題「日米専門家協議の茶番」 5月20日

どう考えても単なる通過儀礼でしかない3日間に及んだ日米専門家協議。予想通り、来月中旬には米国産牛肉の輸入再々開が決定される見通しだ。見ている方が空しささえ覚える日米協議、実態は「協議」でもなんでもなく、一から十まですべては米国の言いなりなのだ。

この期に及んで、私たち消費者が、日本政府をまったく信用できない理由がある。昨年12月12日の輸入再開決定直後に行われた、農水・厚労両省による現地調査の報告書の全体が、いまだに明らかにされていないという点だ。しかも、明らかにできない理由が酷い。米国から、了解が得られなかったからなのだ。

輸入再開決定の翌日、昨年の12月13日、政府調査団は10の食肉処理施設の現地調査に向かった。その時点で日本向けの輸入が承認されていた施設は40施設あったにもかかわらず、日本政府に調査が許可されたのは、米国から指定された10施設に留まっている。そのことからも、この調査が殆ど調査の体をなしていないことがわかる。調査団の渡米直後に成田に到着した、再開後第一弾の輸入元のパッカー(Harris Ranch Beef)を急遽調査対象に加えたことで、日本は結局11の施設を調査した。

1月上旬になって、ひとまず現地調査報告書の概要が発表されたが、まさに単なる「概要」でしかなく、詳細の発表はずれこんだ。政府によると2月下旬に正式な報告書は出来上がったが、「米国の了解を得ないと発表できない」という耳を疑うような理由で、公表は更に先送りされたのである。個人情報を含んでいることと、SRM(特定危険部位)の除去方法などについては企業秘密であって、米国の了解を得ないことには発表できないとする政府の主張は、事ここに至り、安全の確認が最優先されなければならない事態にあって、到底承服できるものではない。米国のTVカメラでさえも加工施設の内部の撮影は禁じられているということだが、安全性の根拠を示さずして、輸入再々開の交渉など出来ようはずもないではないか。

待望の調査報告書は、「米国の検閲」が終了した4月末、やっと日本に帰ってきた。ところが、ここで、更に大きな問題に直面することになる。なんと、その報告書のいたるところが、黒マジックで墨塗りされていたのだ。量にして約半分以上のページにわたって、塗り消されていたといっても過言ではないそうだ。いったいどういうことなのだ!!そもそも、日本政府内部の報告書を、調査対象となっている米国が検閲するなんていう話があるだろうか。いかに、日本政府が、米国の顔色をうかがう「忠犬ポチ公」であるかがわかる。信じ難い。何のための現地調査なのか。

その後こんにちに至るまで、いまだに調査報告書の全体は公表されていない。手元には当然全文があるにもかかわらず、米国の指示に従い全文を公表しない政府は、いったい誰のための、何のための政府なのか。この報告書を、包み隠さず日本国民に公表することなくして、輸入再々開なんてあり得ない。専門家協議では、今後も消費者の意見を聴きつつ、パッカー35施設の現地調査も行いながら、慎重に事を進めていくとしているが、所詮は米国の検閲つき、調査しているのかされているのか、さっぱりわからない状態では、何をしてもなんの意味もない。

段取りは、わかりきっている。ブッシュ大統領に輸入再々開の催促をさせる前に、日本政府が輸入再々開を決めることで、政治的に決定したのではないように見せかけるため、日米首脳会談より前に、輸入再々開を日本政府は決めるに違いないのだ。こんな国民不在・アメポチ政権を、この先も継続して良いとは、誰も思わないはずだ。

郵政民営化を筆頭とする一連の「アメポチ改革」の継続のために、与党が執念を燃やす共謀罪や教育基本法の成立を諦めても、何が何でも安倍政権誕生を目指す小泉総理の意気込みは、もはや狂気の沙汰だ。BSE感染リスクよりも「アメポチ」を優先させる政府なんて、小泉政権だけで十分だ。ポスト小泉は、小泉路線を踏襲する人では困るのだ。とにかく、何よりもまず、昨年12月の現地調査報告書の全てを、国民の前に正直に示すことが先決だ。そのことなくして、輸入再々開は、議論の俎上にものぼらないのである。

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