ケンタッキーフライドチキンの怪 5月25日

「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」の報道が事実なら、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の実態には驚くばかりだ。今回問題視されたのはインドネシアのKFCで、PETAは次のように指摘する。インドネシアのKFCに納入されるニワトリは、成長を加速するために薬品漬けにされ、太りすぎでまともに歩くことが出来なくなっている上に、と殺する前に、羽をちぎられ足を折られ、かつ、意識があるうちに、煮えたぎった熱湯の入ったタンクに放り込まれている。このような虐待に対して、PETAのメンバーである女優のパメラ・アンダーソン氏が、非難の書簡をインドネシアKFCに送ったのだ。

2004年、PETAは、米国KFCの鶏肉加工工場でのニワトリへの虐待の実態を、ビデオに撮りネット上で公開、抗議している。ターゲットになったのは、米大手鶏肉加工会社「Pilgrim’s Pride」社のウエスト・バージニア州にある工場で、従業員が、ニワトリを蹴飛ばしたり壁にたたきつけたりしている映像には、KFC社自身「鳥肌が立つようだ」とコメントしている。生きているニワトリを、くちばしから引き裂き、首をねじり切ったり、ニワトリの目や口にタバコを突っ込んだりと、常識では考えられないような虐待を行っていたのだ。

一般従業員を装い潜入捜査をするPETAに、告発する権利などないと批判する人も確かに存在するが、報告が事実であるならば、この方法をおいて他に虐待がディスクロージャーされることはないのではないか。KFCは、「Pilgrim’s Pride」社の当該工場が、ニワトリに対して残酷な扱いをしないことが証明されるまでは取引を中止すると発表したが、「Pilgrim’s Pride」社の他の工場との取り引きは、そのまま継続されたのだ。PETAが何故、ウェスト・バージニアの工場をターゲットにしたかというと、その工場がKFCの最大の取り引き先であったからだ。

事件以降、「Pilgrim’s Pride」社から日本への輸入はストップしていた。ところが、昨年11月、ハンバーガーチェーン「DOMDOM」が、同社のチキンスティックを1ヶ月半の期間限定で輸入販売した。DOMDOMには、「ドムチキン」と「ドムチキンナゲット」の2種類のチキンメニューが存在するが、そのトレーサビリティは明らかにされていない。今回、インドネシアのKFCの鶏肉加工工場が告発の対象となったことで、下請け先の加工工場の問題もさることながら、下請け会社に厳しい条件を突きつけているに違いないKFCそのものにも、何か問題があるのではないかとも考えられる。

KFCが使用するチキンが、成長ホルモンが投与され、短期間でまともに歩けなくなるまでブクブクに太らされたニワトリの肉であるということは、虐待と同様に、食の安全の観点から大問題だ。ファーストフードは、マクドナルドが100円バーガーを売り出したように、非常に安価な食品だ。しかし、安ければ安いなりの理由が必ずあるわけで、KFCがそうであるように、成長ホルモン漬けの肉を使用し、様々な添加物によって味や見た目・保存期間を調整していることを、私たちは忘れてはならない。

少なくとも、食品安全委員会は、ポジティブリスト制度によって残留農薬の取締りを強化することには着手した。次は、食肉の飼育の段階で使用されている成長ホルモンについても、厳格な基準を設けるべきだ。鶏肉のみならず、米国では牛肉にも大量の成長ホルモンが投与されていることを、決して見逃してはならないのだ。

便利で安いファーストフードは、幼児からサラリーマンに至るまで、多くの消費者に支持され愛されている食品だが、実は、食べれば食べるほど健康を阻害する体に良くない食品であることは、もはや疑う余地もない。しかも、肉の加工の段階で、生きている動物に対して異常な虐待が行われているのだとしたら、私たちはおいそれと、例えばKFCを口にするわけにはいかないのだ。そして何よりも今もっとも重要なことは、企業のモラルだ。多くの消費者の安心・安全がまったく保証されないまま、米国産牛肉の輸入再々開を決定するアメポチ政府に乗じて、間髪いれず輸入に踏み切る牛丼チェーンの企業倫理は、食の安心・安全よりも利益追求を最優先する、消費者の信頼にまったく応えないものだ。消費者の健康は、消費者が自ら守るよりほか確実な手立てはないということを、私たちは肝に銘じなければならないのだ。
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