認知症リスクと闘うにはたんぱく質
卵はコレステロールを怖がらずに食べる
【91歳現役医師も実践するボケない習慣】
【91歳現役医師も実践するボケない習慣】#4
慶応義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通教授らが、
日本の100歳以上の「百寿者」を調べた研究では、
百寿者にはしっかり食べて栄養素をまんべんなくとる人が多く、
体重1キロあたりの摂取カロリーは平均30キロカロリーで成人と同レベルだったそうです。
なかでも増やしてほしいのが、たんぱく質の摂取。
認知症リスクと闘う高齢者の補気に欠かせないのは、たんぱく質なのです。
百寿者の血液を調べてみると、たんぱく質の摂取量と相関する
「アルブミン」の値が高いという特徴があります。
5大たんぱく源のなかでも、いちばん手軽に食べられるのは、卵でしょう。
物価の優等生と呼ばれるほど安価でもあり、家計に負担をかけないのも助かります。
卵は、たんぱく質以外にも、ビタミンA・ビタミンB群・ビタミンD・鉄・カリウム
といった必須の栄養素が含まれており、「完全栄養食」とも呼ばれています。
また、卵黄に含まれる「レシチン」は、脳内で神経細胞が情報をやりとりするときに使われる
「アセチルコリン」の原料でもあります(レシチンは、大豆にも含まれています)。
アルツハイマー型認知症では、このアセチルコリンの減少が確認されています。
たんぱく質が足りていない患者さんに、「卵なら栄養豊富でたんぱく質もとれますよ」
とすすめると、「卵はコレステロールが心配だから、あまり食べたくありません」
とおっしゃる人もいます。中高年には、コレステロールに
ネガティブなイメージを持つ人が多いようです。
その多くは、卵のように食事から体内にとり入れるコレステロールと、
血中のコレステロールの混同から起こる誤解なのです。
そもそもコレステロールは、私たちの体に必要不可欠な栄養素です。
体内の細胞を包む「細胞膜」をつくったり、各種ホルモンの原料となったりしています。
このため、必要量のおよそ8割は、肝臓でつくり出されているのです。
食事からとったコレステロールが多くなると、肝臓でつくる量を減らして調整します。
ですから、卵のようにコレステロールが多い食品をとっても、
血中のコレステロール値が跳ね上がることはないのです。
卵とコレステロールに関して、私には次のような父との思い出があります。
父は医者になりたての頃、卵を食べると本当に血中のコレステロール値が高くなるのか、
自分の体で実験することにしました。そこで、ゆで卵を1日に18個食べてみたそうなのです。
おそらく1週間くらいは続けたのではないでしょうか。
結果的に、血中のコレステロール値は、上がらなかったそうです。
父が身をもって明らかにしたように、健常者が卵を毎食1個ずつ食べるくらいなら、
血中のコレステロール値を気にしなくても大丈夫なのです
(健康診断で「脂質異常症」が疑われる人は卵の摂取については主治医に相談してください。
また、「家族性高コレステロール血症」という遺伝性の難病では、
例外的にコレステロールを含む食品の厳格な制限が求められるのでご注意ください)。
<ポイント> 好物ならば完全栄養食の卵を毎食1個食べましょう。