10月半ばに台風直撃の中、京都で行われた「独立講演会」でこの作品ことを初めて知った。すでに絶版となっているため、そのときはアマゾンで1万5千円前後の高値がついていたが、今はもう少し落ち着いた値段になっているようだ。各地の図書館に所蔵されているという青山さんのお話だったので、地元の図書館を調べたらあった。早速借りてきた次第。ヒトコトでこの小説を言い表すと釈迦に説法的な表現であるけれども「上手い!」。通信社記者の目線から捉えられた昭和天皇崩御前後の政治を中心とした世の中の動きが、緊張感とものすごいスピード感をもって語れていて、手に汗握る思い出一気に読んでしまった。青山さんが共同通信時代に経験した取材活動のエピソードが元になっていると思われ、現場を踏んだものにしか出せない圧倒的な迫力。ふたりの魅力的な女性も登場して、ちょっとしたロマンスもあり、男ばかりで汗臭くなりがちな世界に、とてもよい新鮮な香りのアクセントを与えている。本書に登場する政治家はすべて実名を伏せてある。あとで調べてみてある程度は判明したのだけど、まだわかっていない人物がふたりいる。「日米の貿易交渉を取り仕切ってアメリカに絶賛され早くもいずれは総理の器の呼び声が高いスター政治家」と「総理側近として陰から政権を支え、新しい内閣では有力閣僚に抜擢されると噂された政治家」のふたり。誰なのだろう?
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