不定形な文字が空を這う路地裏

臨終の午後









喉の渇きは心を脅かし
眠りの間に全身に浸透する
網膜に絡みついた思い出が
後にも先にもいけない呪縛を仕上げるから
足が重い
腕が痛い
何をする気にもならない、ずいぶん前に
俺はもう壊れてしまっているんだ
悲鳴を上げたら止められなくなるような気がして
右の拳が砕けるくらい噛んでこらえた
ああ、夏は、夏はいつの間に
その身を翻して向こうに行ってしまった?
雨の降る日は悪い夢のように暗い
暗い、暗い、たとえば窓を外してしまっても
視界の先が輝くことは無いだろう
誰に届く言葉も綴れないようなそんな日には
せめて鎮魂のように静かに晴れて欲しいのに
窓から見える山の上に誰かが居る
物質としては存在し得ない誰か
それはもしかしたら分離した俺の心なのかもしれない
俺を捨て、まともな身体を選ぶべきかどうか思案しているのだ
強い北風にそいつは翼を広げた、ああ、おお、俺を置いてゆくと言うのか
お前はどれほどこのガラクタの中でイラついていたのだろう、お前が飛び去った後の濡れるばかりの山肌
深遠は呆然と、ただ呆然として
硬い椅子の中で目を見開くばかり
もう何も見えない
もう
何も感じようとしない
魂は行ってしまった
見送ることに長けてしまって
もう



その痛みを捨てることも出来はしなかった

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「詩」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事