肩口に齧りついた過去
背中に張り付いた
名前の無い鎮魂歌の譜面
真夜中過ぎ、脳天をカチ割るような
レイトショーに踊らされて
死んだ叫び声が内臓を蝕んでいく
時は
少ない水に溶ける絵具のようだ
どろりとしていて
まるで
着色という運命から逃れようとしているように
巨大なパレットの上で不定形に固執している
その色を舌の上で味わうと
まるで
運命のすべてを先に教えられたような気分になることだろう
身体中の風穴から
観念的な血液が吹き出す
心臓はいつでもオーバーヒートの夢を見ていて
頻繁に握り潰されるような伸縮を繰り返す
本当に恐ろしいものは
わざわざおぞましい顔をしてやってきたりなんかしない
感じるのはおまえだ
感じるのはいつだっておまえなのさ
口腔に広がる
粘ついた唾液のわけを
泥のような眠りを断ち切る
漠然とした慢性的な予感のことを
真夜中に踊る漆黒の妖精たち
あらゆる理由が炙られてできた鱗粉をばら撒く
同じ希望と
同じいらだちが繰り返される
リピート設定されて放置された
プレーヤーのなかのディスクのような気分になる
ハロー、昨日の夜
だれもおまえのことなんか欲しがってはいない
そのドアから出て行ってくれ
新しい眠りが入ってこれるように
邪魔しないでくれ
貪欲な女のように
何度も囁くのはやめてくれ
満足したりなんかしない
こんな夜の中で投げつけられる材料でしつらえられたまぼろしなんかで
滑り出す?
引き千切られる?
失われる?
再生される?
忘れられる?
思い出せる?
質問には答えが無い
そうした問いばかりを選んで生きてきた
こんな夜が何度訪れても
こんな時間が何度喉を絞めつけても
刃はいつでも食い込んでいる
致命傷にはならないが、深い
運命は境界線を意識させることに慣れている
そこを越えるためのパスポートはまだ持ち合わせてはいない
そこは徹底的に防衛されていて
身勝手に通過することはできない
もしそうしようとすれば
完璧な崩壊を目の当たりにするだろう
呼吸に集中して、なにも聞こえなくなる
世界は肉体の内側だけに存在するものになる
生命の不確実な伸縮が
それでも確かに脈動するための何かを懸命に探している
見るためではなく
そのほかの何かのために見開かれた眼球が見つめるものは
きっと解読されていない古代文字のようなかたちをしているだろう
不在のように転がることが
存在を確実に知ることだってある
頭蓋骨は分解され
意識ははるかな世界をのぞむ
存在はみな
未知の信号をキャッチするアンテナだ
だれもがそこから人生を始める
ハロー、昨日の夜
おまえには日付なんてなんの意味も無いことだったんだね
本当は、そう
区切られないものが生まれ続けているだけなのだもの
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