この街の水道管に強力な睡眠薬を流し込んで
あらゆる種類の人間どもをだらだらと眠らせてしまおうぜ
ミネラル・ウォーターのボトルをコンビニで調達して
ゆうゆうと渇きを潤しながら
無人の大通りを闊歩してゆこう
交差点のまんなかで
ロマンティックにキスをかわそう
ドライバーを失った
高級車たちをやきもきさせてやろう
ペット・ショップから値札のつけられたやつらを解放して
ブランド・ストリートでおイタをさせよう
この街は爪あとだらけに
閉じ込められて泣いていたやつらの
胸のすくような爪あとだらけに
ストリートバスケのゴールを縫い付けてしまおう
あらゆるシグナルをショッキングピンクに塗ろう
映画館に潜りこんで
映写機の操作をマスターして
「ロードショウ」に載ってる映画を片っ端から観てしまおう
次に友達に会ったとき自慢できるぜ
今は眠っている友達に
ロング・ランの
素敵なドリームを見続けている友達たちに
ミュージカル・スターのように踊りながら
ハイスクールにペイントしよう
キース・へリングの真似なら
俺たちは完璧にやれるはずさ
そこにはラブがほんの少し足りないかもしれないけれど
茶目っ気があればどうにか見られるものになるはずさ
路線バスの中で眠っている運転手をベッドへ運んで
新しい運行表に基づいて走ろう
いつもは見たことのない景色
いつもは見られない景色を眺めながら行こう
ガソリン・スタンドで満タンにすれば
汚れてない海まで走ることが出来るはずさ
海に着いたらサーフィンをするんだ
店員のアドバイスは受けられないけど
自分に合ったものはなんとなく感づくはずだぜ
恥ずかしがる必要なんかないんだ
上手く乗れなくったって指をさして笑うやつも居ない
その代わり溺れちまったら洒落にならないけど
二人とも飲み込んでしまうような波が来なければ何とかなるさ
疲れたらハンバーガーを焼くんだ
マクドナルドに忍び込んで
どんなプランも思いのままだぜ
メガマックがひっくり返っちまうような
身体に悪いものを作って食べつくしちまおう
デジタル・カメラで写真を撮っておこう
いつか悲しみがやってきたりするようなことがあったとき
引き出しから取り出しては馬鹿笑いできるように
僕の肩にもたれて
夕焼けを見ながら君は言うだろう
「こんな時間がいつまでも続けばいいのに」って
だけどいつまでも街の連中を眠らせるわけにはいかない
薬の効き目はおよそ一日限りさ
タワー・レコードへ行ってたくさんの音楽をものにしよう
あらかじめロゴ入りの袋をもらっておけば
そんなに良心が咎める事もないさ
規則は人間のためのもの
みんな眠ってるんなら知ったこっちゃない
欲しいもので満腹になったら
電化店でカーステレオを取り付けるんだ
ハンパなくクリアーなサウンドのスピーカーも一緒に
チェンジャーにいくつか放り込んだら
車体が揺れるくらいボリュームを上げて
恍惚としながらナイトラインを走ろう
午前零時までに帰らなくちゃ
非合法な魔法の効き目が切れる時間だ
部屋に帰ったら知らん顔をして
ベッドにもぐって当たり前に眠るんだ
夜が明けたらみんなと一緒に
一日眠りこけていた事に驚くのさ
上手くやらなくっちゃいけないぜ
途中で笑い出したりなんかしちゃいけない
途中で笑い出したりなんかしたら
君は笑い上戸だからきっと止められない
そんな話を何度もしたね
都会に汚れただだっ広い河のほとりで
「笑い出したりしちゃいけない」ってところで君は決まって笑い出して
笑いがおさまるまで僕のセーターの肩口をぎゅっと握り締めたものさ
おかげであのころのお気に入りは
どれもこれも君の手形がついたまんまなんだ
目を開けておくれ、ダーリン、まさか一番先に君が眠ってしまうなんて
汚れた河でも朝日を受ければ輝くことが出来るのに
君はもう二度と笑うことがないだなんて
まさか一番先に君が眠ってしまうだなんて
まさか一番先に君だけが眠ってしまうだなんて
肩口から愛が血を流す
僕は誰と笑いあえばいいんだい
君だけに通じるジョークだった
君だけが僕のことを判ってくれた
僕たちはお互いに馬鹿話をして
明るく過ごすために神様に出会わされたはずだった
汚れた河が朝日を受けて輝いている
僕だけが
いつかの夜の中で眠りを壊してしまったみたい
最近の「詩」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事