突堤の先で
幾人もの人が
風に負けながら釣糸を垂れている
風は渦巻きのように
向きを工夫しながら吹く
おかげで僕の髪は
古代のように奔放に遊ぶ
波は小さく
少しも
騒々しさを感じないのに
ひとつ手前の道を走る
軽トラックのエンジンのうねりはまったく聞こえない
おかげで
それはすごくスマートな発明のように見える
空が
ホラ貝を吹き始めた
と、思ったら
ジェット機が離陸する
でか過ぎて
現実味に欠けるそれは
帰る気など微塵もないみたいにたちまちに小さくなる
人など居ない
世界の真実は、驚くほど静かで
暑くなった僕は上着を脱ぎ
着古したシャツを天辺からの太陽に晒す
それはまるで
再生の呪文を施してるように
馬鹿丁寧に積み上げられた
テトラポッドの上に登って、ふかぁく潜れるところへ行こうか
午後からの仕事がなけりゃ
きっと
そうするんだけど
風が止むことがないので
汗を掻いたことに気付かない
本当はそんなことが
夏と呼ばれるべき景色
のぼせて倒れるのは
陽に当たらないことばかり考えてる連中さ
時折試すように
高い波頭が跳躍する
碧は段階を経て
深くなるほど色を増す、ああ、その深度は
きっと宇宙の切れ目にまでリンクしているんだろう
眼に見えないことほど
信じることはたやすい
忘れそうな時間にほど
永遠は息づいている
花火のような潮の満ち引き
直進しながら消えて行くジェット機
訳もなく受け入れられる景色を大切にしなくちゃ
荒れた胃を気にしながら砂浜に下りる
焼けたジョージアの缶が判決を待って居る
水平線の先にはきっとなにもない
真実なんてそんなもんでいいじゃないか
なにかを見つけたなら適当に名前をつけておけばいい
いち、にぃ…7羽の鳥が
戦闘機のように並んで
たちまちに視界を飛び越えて行く
風は
止むことがない
堤防の向こうの歩道を
やんちゃなバイクが走り去って行く
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