不定形な文字が空を這う路地裏





雪に濡れた玄関で靴底が少し滑るのを
コンマ数秒気にしながら戸外だの何だのというあやふやな領域へ
リロード、リロード、リロード、一日は蓄積ではなく劣化し続けるデジャブ
耳に押し込んだイヤフォンからは痛いほどのボリュームでオルタネイティブ
ニコチンの煙の様な雑音を遮断するにはそれしか手が無かった
駅のホームで人身事故、人の生命すらマンネリになるハイソサエティ・ライフ
押さえ込んだ感情が傷みに変わる頃、もう叫べない自分に気がついた
曇天、ここにこれだけある
見えるものが全て灰色だ、ドブネズミの背中の様に蠢いている人の群れ
聞こえない筈の延べ数万の足音が鼓膜の内側でこだまする、何処に行く、何処に行くんだい、虚ろな顔の不揃いなハーメルン
自動販売機が保存料にまみれた爽快な調合を厳かに吐き出す、はは、インスタントよりも手軽な朝食が手に入る
記憶にメスを入れる様に断続的に吹く強い風、コートが加護してくれるレベルじゃないんだ、もうずっと昔から
胃袋の辺りに痛みがある、キリキリと、煮え湯の様な痛み、もうずっと
知らない振りで痛みと思わないで居られる、ある程度まではたぶん
馬鹿でかいビルの中でどれだけイオンが発生されていようと、そこへ潜り込むまでに肺は真っ黒になるのさ
守れるかい、心は守れるかい
知らない振りは上等だろう、ハイハット…ハイハットの音が鼻につくなぁ
きっとシンセサイザーの物真似なんだ

ボリュームは絞れない


もっと聞きたくないものがたくさんあるんだ

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