光線が
頭の中を
ゆっくりと駆けるのを見ていた
それはまるで泳ぐ蛇のようで
そして漏電のようにあてどなかった
軌跡にずっと残る
残像に惑わされているうち
バスタブの湯は冷め
むしゃくしゃして
シャツのまま浸かった
ちょうど余計にまといすぎる心に似て
ナイロンの下の本質は憮然としていた
コーヒーメーカーの上には
いつ落としたのか
ちょっと記憶に無いサーバー
水っぽい溶岩のように
あぶくを吹き上げていた
蒸発してどこかへ行く
一本ずつ、毛細血管が
プチンと切れる音を聞いて
ぼんやり見やった中空に
糸のようなほこりが
亡霊のようにふわり
今夜は別れのように静かだ
もはや
絶縁の心あたりなど
アドレス帳には見当たらないが
だからと言って
ほっといてもらえるわけでもない
音を消したテレビで
誰かが歌っている
とてもハートフルな
表情をしてたから
ボリュームは決して上げなかった
今度生まれてくるときには
耳を持たないものになろう
瞳を持たないものになろう
口を持たないものになろう
かわりに
もっと何か便利なものを持って
いざ、いざ、と
産道をくぐって来よう
そして
生まれたとたんに高笑いをして
たいそう
皆に気味悪がられよう
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