不定形な文字が空を這う路地裏

音の無い部屋





暗闇のままの夜明け、暗闇のままの夜明けの中で
役立たずの眼球と不感症の皮膚に呪い釘を打ちながら
心はすでに奈落途中のヒダにもたれていた、指の先がようやく引っかかる程度の心許無いヒダに
現世は気が狂うような夢、夜の夢はとうによだれを垂らしている
あはは、あははは、壁紙のような爽やかな朝だよ、意気揚々と歩き出してゆけブリキ細工みたいな錆の浮いた希望
ポケットのコインでカップベンダーのモーニング・コーヒー飲んで
亡霊のような生き様を見せつけておくれ―人込みにまぎれていれば
何もかもごまかせると思っているんだろう?
軋むベッドのマットレスからは、やがての俺の死の匂いがした、じめじめとして―
深く浸透してゆく概念という重み
壁の無い迷路、白夜の中のもの患い、聾唖者の悲鳴
届くものしか認めてもらうことは出来ないだろう?おお、俺が今よどみながら身を起こすときに
延髄から抜けてゆくものの事を…正体の無いもやのようなそれのことを
ああだこうだと形容することなど到底不可能だよ、それは決して書き出せない手紙のようなものだよ
くたばってしまうことに言い訳などしない、腐敗してしまうことに後悔など無い
少なくともそれはひとつの生体であったのだから
どうする、本当のことにはクリアなピントなど無いよ、何もかもが曖昧なフォーカスのままで進行してゆくんだ―的の無いクレー射撃みたいなものさ、そうでなければ
俺はきっとこんなものにしがみついたりしやしないだろう、暗闇のままの夜明け、暗闇のままの夜明けの中に
見たいと思っているものが息を潜めているのかもしれない
見たいと思うまま、探さないことにした
どうにか出来るようなものを誰も運命と呼びはしない、必ずもぎ取れる果実の前で
ずっと立ちすくむなんて阿呆のやることだ
おお、完璧な夢だ、俺の首筋にずっと刃を突きつけている―決して顔を見せようとしない狡猾な神
上皮ぐらいなら傷をつけさせてあげるよ、傷みなどずっと感じていればそのうち慣れてくる
俺が見たいもの、俺が感じたいもの、それら全ては曖昧なフォーカスのままで
何があっても
近寄れない蜃気楼であったとしてもきっと捕らわれたままで居るだろう
起きられるか?顔を洗って着替えるんだ
でないと―

腐敗すら、ままならないよ

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