不定形な文字が空を這う路地裏

『バックス・バニーのエプロン男』事件




食物が残った皿だけ選んで叩き割る
飛び散って、まるで、凄惨みたいじゃん
トマト・ソースなら飛び降り、イカスミならば焼死体
カルボ・ナーラなら轢死体かね―ベーコンがふんだんでないと
ちょっと
無理あるかな
キッチンのフロアでレトリック、チョークだ、チョークを持って来い―現場を保存しておかなくちゃ
カメラ
古臭いストロボのついたカメラをわざわざ持ち出して
射撃訓練の様に大股に構えて撮った(イメージは大事にされなくちゃいけない、例えそれが誰に見せる必要の無いものでも)
ところで
何も乗っていない皿たちは恐々として樫の木のテーブルの上で震えている―ドウシテ!?ドウシテコンナコトニ―!?
大丈夫ですか?いったい何があったというんです?
『突然様子ノオカシナ男ガ現レテ次々ト友達ヲ―』
なるほど、その男について、何か覚えていることはありますか?
『動転シテイテ、何ガナンダカ…タダ…』
ただ?(ああ、忙しい)
『エプロンヲシテイマシタ…バックス・バニーノイラストノツイタ…』
なるほど、おい、緊急手配だ、『バックス・バニーのエプロンの男』―逃がすなよ!!


それから、まあ
結構派手な大捕物の後
『バックス・バニーのエプロンの男』

無事、逮捕の運びとなり
気が済んだので
箒と塵取、雑巾を用意して

何もかも
片付けた


この事件は
新聞には載らない
『バックス・バニーのエプロンの男』

その後
どうなったのか
俺にもいまいち
よく
判らない


ただひとつ、言えることは


フロアに皿ごとぶちまけたパスタを片付けるのは

考えてたよりも
ずっと





骨だった

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