不定形な文字が空を這う路地裏

異教徒の無数の傷口には自らを断罪する理由が記されている









右から左へと内耳を駆け抜ける人間的なハムノイズ脳下垂体の隙間に詰め込んで昇天の妄想、暗証コード知らされぬままの包装紙の中の暗闇で息を詰めている瞬間的に選択されなかった反応の悪い概念たち、潜在的な衝動が共食いを始める血と体液の序曲が腹腔を盛大に振動させる温度の狂った季節の深夜に、指先は団栗ほどの小さな甲虫の屍骸に触れるような罪悪感と寒気を弄り続けて便宜上の壊死を体感する、悲鳴にばかり神経をすり寄せてしまう粗悪な鼓膜たちが本当に欲求する振動はいったいなんなのか、遡れるだけ遡った記憶の中にもそれを解き明かすような出来事は眠ってはいなかった、まがいものの静寂が存在を滑稽なものに思わせて胃袋は病的な伸縮を繰り返し咽頭に不快な感触を呼び起こす、胴体だけの生物が懸命に這いずって来るみたいな予感が残された時間を圧迫して寝床はある種の呪いを孕んだまま沈黙し続けている、のべつまくなしに囀り続ける小石が次々と投げ込まれて転がってくるみたいな時の経過は崩壊のための経文に思えてくるだろう、忘却的な進行ばかりが執拗に詰め込まれてくるだけの認識が安らかな眠りに辿り着くまでにまはまだそれ相応の時間が掛かる、水死体の膨張した腹の中で充満しているガスみたいな美しい日々の思い出がそれとばかりに破裂する瞬間を思わせる音が寝入りばなにいつも聞こえてくるんだ、連続し継続され堆積していくものたちならそこには決して安らかな眠りなど存在するべきではないのではないかと理想論に溺れた先住者たちの惨めな成れの果てがそうしたものを想像させるのだろう、現実的な現象には種類を問わず相応の示唆が見出せるものだと知っておかなければ箱庭で組み上げる製作キットのような希望しかその手に掴むことは出来ないだろう、嗜好の似通った連中が顔つき合わせて狂信的な宗教のように糊代や折目を確認しながら挟み込んだり糊付けしたりして作り上げていくものたちの印象はまさしく迂闊な死の果ての死体のようだ、廃棄物処理場でくすねた部品で修理を何度繰り返したってそれはきっと汚れた手も洗い終わらないうちにどす黒い煙を上げて限界を主張するのさ、右から左へと内耳を駆け抜ける人間的なハムノイズ飲み込んで観念的な故障が全身に浸透する、両の目に見える錯覚的な光の瞬きは必要最小限のレベルにまで削ぎ落とされた信号と化した生命のようで例の甲虫のイマジネーションはこれだったのだと気付いたとき不自然に濡れている指先に気付き、眺めてみればそれは記憶に堆積し続けた血液の具現化とでも呼ぶべき液体の集合であり思わず漏らした悲鳴には無意識下の怖れが滲んでいた、果てしないのに期限があることへの怖れとでも表現すれば納得出来るのだろうかと自問してはみるもののどこか的確さを欠いた気がして落ち着きを失効する真夜中だ、踏み外せば落ちる小さな足場の上で不細工な舞踏を披露するクラウンの涙のメイクが本当の涙で歪んでとうとう消えてしまうみたいなやり切れなさ(落ちたら死ぬ落ちたら死ぬ落ちたら間違いなく死んでしまうんだ身体中の骨という骨が砕けて筋肉や血管が壊れて内臓が破裂して破れた皮膚のあちこちから勢いのある血が吹き出して辺りをぐちゃぐちゃにして反動が植えつけられた頭部はびくんびくんと何度も何度も地面に打ち付けられそれはきっとこと切れても宿命を語り尽くすまでは繰り返され血液があらかた出尽くすときには何人もの人間が息絶えたみたいに血の海でどうしようもない沈黙みたいな温度が漂っていて瞬く間に腐敗し始める予感に満ちていてでも誰もどうすることも出来なくて飛び出した目玉が最後に見たものをどうしても語りたいとたとえ願っていたとしても…)、不眠を語り夜明けを待ったほうが利口なのではないかと思えるのは恐らく疲弊しているのだ、右から左へと内耳を駆け抜ける人間的なハムノイズのせいで何もかもが陰鬱な心境に支配されてぐうの音も出ない、ほうら嫌というほど地面に叩きつけられたクラウンが吐き出した血液が現実の寝床に溢れ出してきて枕元は裏返るように揺れる、もしも明日の朝正気の中で目を覚ますことが出来るならこの出来事をまとまりのない詩文にして大仰に綴るがいい。

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