36階の閉ざされたテラスに
置き去りにされた詩篇があると聞いたのです
鍵を手に入れる為に
三度身体を汚しました
それは別段悪いこととは思っていません
ヤモリの様な舌の感触が
時折鳥肌を立たせるって位で
だって
エレベーターの扉を開くパスすら
私は
知らなかったのですから
その詩篇について
詳しい事は何も知りません
ただ
閉ざされた場所に読まれない詩篇があると
そう
耳にしただけなのです
それなのに
どうしてでしょう
どうして
それだけのことで
私の胸は決意に震えたのでしょう?
それは運命でしょうか
それとも
度を過ぎた好奇心でしょうか
その詩篇の事を思うだけで
すべてのものが
後ろに追いやられて
背徳的な高揚感すら
私は
覚えてしまうのです
ただ単に
未知だからこその事なのでしょうか?
興味と呼ぶには
すでに背負い過ぎてしまいました
もうすでに
私は
取引を済ませてしまったのですから
エレベーターのボタンはとても柔らかくて
そのせいか
パスワードはとても映えました
モーターのうねりが
下腹部から
私を鈍く突き上げる
ああ
36階の詩篇
閉ざされたテラスの
読まれない詩篇
あなたは
私を待っているに違いない
36階のボタンは
バージンスノーの様でした
愛でる様に押して
私は…
上昇するのです
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