不定形な文字が空を這う路地裏

午前零時の流動








グロスの様に時間が歪むのを見た、午前零時のなだらかな幻覚
本物の狂気の前には錠剤など無意味だ
フォルダの移動の様に僕は浮世から隔離され
緩慢とした境界の向こうで斜めに滴り落ちる夢を見る
音が、音が水の中に居るみたいに、ほとんどのものの回転を遅くして
何が善意で何が悪意なのか、もう
読み取ることなんて到底出来っこない
何よりも一番問題なのは、帰って来たいとかここは恐ろしいとか
僕がちっとも感じていないことで
ああ、それならそれで
そんな風に認識していることだ
それならそれで
いつでもそうだった、どんなに失ってはいけない時でさえ
ああ、それならそれで
それは痛みを緩和する響きを持っているのだ、だから何度もすがってしまった
その結果がこの緩慢とした強固な境界線だ、いや、果たしてこれはそもそも
線なんて名詞で呼べるのかどうかさえ怪しいとしたもんだ
何かこれに名前をつけよう、言葉にするにあたって―もっと視覚的に一般的に語りかけることの何か―
悩みまくった挙句、『よくある異次元』、そんな名前をつけてみたんだけど
それは確かに一般的には至極的確な表現に違いない、だけど
僕の中には何のリアリティも生み出さなかったんだ、と
僕はまた浮世の枠の中に居た、朝の整髪用ジェルに
ほんの少し昨夜の境界線が認められただけだった
髪につけた
寝癖を直した


でも生きてる

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