すすけ始めたショート・ケーキと酸っぱくなったブルー・マウンテン・コーヒー
大好きなものが君を裏切るのに
そんなに長い時間は掛からないのさ、傷ついちゃいけない
誰もが君の戒律を壊そうと隙を窺っている、破り捨てられた頁に記してある言葉には
きっと
何の教えも感じられない
口にするもしないも君の自由だけれど、それはもしかしたら
君の体内の組織にやばい損傷を施してしまうかもしれない
裏切ったやつの背中に追いすがったりなんかしちゃいけない、それは
君の尊厳を地の底まで貶めてしまうことになる
君に出来ることはたぶんやせ我慢をして見送ることぐらいなのさ
眠れないことは一応覚悟しておいて寝床に潜り込もう、だけど君は決してイラついちゃいけない
心を隠して見る夢ほどに怖いものはないから
ある意味君の不眠は君を救おうとしているのかもしれないんだぜ
だって、『ケーキとコーヒー?』ハハン、何ならそのまま食卓の上に並べておきなよ…もしも君が臭いに鈍感だというなら
そいつが日に日に形を変えるのをずっと眺めていればいい
もしもお腹が空いてどうしようもなくなったなら、ほんの少しだけ指でクリームをすくって
どんなことが君を打ちのめすのか確かめてみればいい、それは決して君の口腔で甘く味を変えたりなんかしない
退屈な日常を木っ端微塵に打ち砕く絶望が欲しかったんじゃないのかい―それが自分を変えてくれるって、どこかで強く信じていたんじゃないのかい?
嘘ではないね
嘘ではないよ、だけど、もしもそれをいいほうにだなんて考えていたんなら
君はそこにある油のようなブルー・マウンテンよりもっとずっと阿呆だったってことだよ
君の戒律の為にミサを開いてくれる神父なんかどこにも居ない
だってそれは君だけにしか分からない言語で書かれているんだから
国、歴史、人種、そんなものたちの言語がどうして統一されなかったか分かるかい
そこには理解が困難なものがあるんだって誰もに悟らせなければならなかったからさ
だってそうだろう、丸見えの愛なんてプランクトンにでも任せておくしかないじゃないか
メイドカフェに行けば似たようなものは手に入るかもしれないけれどね
君がそれを口に含もうが今すぐ流しに捨てようが僕の知ったことではないけれど
だけどね、よくお聞き、瞳さえきちんと開いていれば僕らはどんなものからだって学ぶものが出来る
詩情と激情を履き違えたり
信仰と戦争を履き違えたりして孤独の死体の真ん中で頭を抱えるなんてこともうしなくてもよくなる
打ち返すことも左の頬を差し出すことも
そうするだけの理由が無ければきっと正しいことなんかじゃない
僕らに様々なナイフが与えられたわけは
それを時には誰かの肉にめりこまさなければならないということを学ぶためなのかもしれない
本当の刃の意味なんて
殺し合いをした奴にしか分からないのかもしれないけれど
仮に硝煙の臭いを嗅いだからとて銃の意味が分かるとは到底思えないけどね、だって
それは感触と呼べるものではないからさ
そうでなければ戦争なんてあんなにブームになりはしないよ
感触の無い死体ならそれが誰だってきっと踏みつけられる
だから、もしも君がそのクリーム、もしくはコーヒーを口にして酷くお腹を壊したりしたら、君の心にはきちんと裏切りが刻まれるかもしれない―やってみろとは言わない、僕は何度も君にそう言ってる
君が決めることだ、君が決めることだ
それはどちらにせよ君が決定しなくちゃいけないことなんだよ
すすけ始めたショート・ケーキと酸っぱくなったブルー・マウンテン・コーヒー
君はたぶん食卓が気になってこの先何もすることが出来ない
それは君がどちらにも決めることが出来ないせいさ
裏切ったやつの背中になんか追いすがっちゃいけない、それは君の尊厳を地の底まで貶めてしまうことになる
どんな結果が訪れるにせよ君は自分でそのことを片付けなければならない
ナイフを突きつけてくるのは、なにも
他人ばかりとは限らないんだぜ
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