小さく丸めたレシートがポケットの中で酸化して指先に嫌な臭いを付けた
膨張してゆく押し隠した誤差が肺を圧迫しながら古い臓器のような色に変わり始める
五月の午後には色が無い、騙されているような気さえする雑踏のディレィ
車道のホイールが陽射しを反射させて黒目の真ん中から中枢の向こうまで射抜く
穴の開いた後頭部からポロポロと零れ落ちる未整理のままの何かを惜しいとも思えずに
点滅を始めるシグナルに急かされながら大して重要でもない向こう側の歩道に
ズーッ、ズーッ、さまざまなエンジンの稼動音がいつしか肥大した世界の余りものを引き受けて引き摺っているように聞こえて
無表情のまま息が苦しくなるほど笑った、傍目には少し肩が震えただけだったさ
左腕をわずかにかすめた宅配ピザのバイクを想像上の鈍器で撲殺し尽くした、冗談みたいに返り血が跳ねて、俺は結構なメイクを手に入れた
様子見を続けているような太陽にリンクした、妙に熱の無いその温度、おかげで恍惚感はまるで無かったぜ
周辺を行き過ぎるやつらの上着の柄が少し残像を残すように見えるのは浅い眠りのせいなのか
タワー・レコードの浮ついたでかいロゴの前をなぞるように歩いているうちに
何のためにここまで歩いてきたのかどれだけ考えてもどうしても思い出せなくなった
きっとさっきのスクランブルで開いた穴から幾つかのものと一緒に落としてきてしまったんだな
ちょっと前可愛い娘が飛び降りたことがある12階建てのビルの佇まいはそりゃもう見事なもんだったぜ
押し黙った小奇麗な建造物の中でそこだけが極端な自己主張をしているように見えた
さっきよりもずっとずっと派手な血飛沫が屋上近くまで吹き上がっていたんだ、胸がムカつくような臭いすら感じられた
潰され植えつけられ染み込んだ空虚な死が乾いた埃を喰ってほら鮮やかに芽吹いた
あの娘の呪いはここで似たような誰かを誘って生きてたその時よりも確かに生き永らえてゆく
出来ることならあの娘と肩を組んでプリクラを撮りたいぜ、何枚も何枚もさ
死んでしまう娘となら上手くやれるような気がするなんて与太話に過ぎないかね
そうだよ、俺は本屋に行こうとしていたんだ、何か読みたい本があるわけでもないけどさ
方向を変えたいな、方向を変えたい…本屋に行くにはこの道じゃ遠すぎる
小さな店に潜り込んで珈琲を被ろう、どうにも血の臭いが、どうにも血の臭いが染み込みすぎた気がしてならない
大型連休なんだって?ちっとも、ちっとも気がつきゃしなかったよ
切れかけた蛍光灯のような目覚めに、新しい浅い眠りがまた産声を上げて
揺らいでいく、揺らいでいくね、膝をつきそうな虚脱がどうにも元気で
版画展の呼び込みをしてる過剰な笑顔のお姉さん、少し見ていくから
奥の高そうなソファーで座らせて貰っても構わないか?
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