犬歯で断ち切った
狂気が胃袋で
慢性的な疾患を啜ってまた蘇生する
ああ、こすれ合う
ガラス片の様な不快な
泣声を内臓があげている
暗く蒸し暑い路地、喉元から這い出す欲望の種類は
あまり人には
見せられない様なものばかりだった
カタツムリの様に
跡を残すそれは
いつかありあまる頃に、オールナイトムービーで見た
もの言わぬ誰かの視線の様に
閉じ込めたものに封じられた不具を暗示していた
ガガ、ガガと
どこかのバスルームの換気扇が何かを絡ませて
リズムを約束しないループを真夜中に投げ出している
そのループに乗せて、千切れた羽根持つ妖精たちが
退屈と呟く代わりみたいに身体を揺らせていた
虹色のネオンが照らし出すのは
天秤の壊れた天国へ生きたがる男たち
意地汚い通りを抜けて、古い橋をゆっくり渡って
後悔の集まる溜まりへ行こう
酒樽の上に、正体を無くした神があぐらをかいて
運命のパズルをいいかげんにあつかっていた
俺は札を出し、そいつに向けてチラつかせ
ちょっとした交渉を持ち掛けた
天国が手に入る目算はちゃんとあったんだ
純度になんか期待はしてなかったんだけど
お前はツイテるって神様は囁いた
「こんなのそうそう入ってこないぜ」
とてもいいシチュエーションだと思ったので
ダメもとで奮発してみることにした
かくして
天国行きの切符がたくさん切られ、身体が甘く夜気に解け始めると
喉に詰まりそうな天国が始まる
夜が明ける頃には
プラスとマイナスが釣り合う、痩せた猫が
寝息をたてる側を抜けて部屋に帰ろう
どんな報いにせよ
何も数えられないよりはきっと幸せなことなんだろうな
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