今日も朝から夜までバタバタの一日でしたが、その中で午後2時から約1時間、「教育の情報化推進に関するWT」第3回会合を開催しました。
前回の第2回会合で、「教科書協会」および「デジタル教科書教材協議会」からヒアリングを受けたのは既報の通りです。その中で、特に今後の『教科書のデジタル化(教材としてではなく、教科書としての位置づけを目指す場合)』を推進していく上で、いつくかの重要課題があることを確認しました。
主な課題は以下の通りです:
- 教科書制度(検定制度、発行、無償配布など)との関係
- 学習指導要領との関係
- 著作権制度との関係
- 教科書予算との関係
そこで今日は、それぞれの課題について文部科学省の各担当部局より現状と課題について説明を受け、具体的な問題点や今後乗り越えていくべき課題について議論しました。
結論から言えば、今後議論すべき最も大きな論点は、「デジタル教科書」を教科書検定制度に基づく正規の「教科書」とすることをめざすのか、それとも教科書として使いたいけれども、制度上はあくまで「副教材」という位置づけでいくのか、ということです。これによって、クリアすべき課題や今後の進め方が大きく違ってきます。
正規の教科書とする場合には、まず真っ先に、「学校教育法」を改正しなければなりません。
学校教育法第34条は、「小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と定められていて、これが中学校にも準用されています。ここで議論になるのは、「図書」というのは紙ベースでなければならないのか、という点ですね。文部科学省の説明は、法律の制定当時はデジタル図書を想定する状況になかったため、図書とは当然に紙ベースを想定している、とのこと。であるとすると、ここでデジタル版も教科書(または図書)として通用することを規定しなければなりません。
その上で、学習指導要領に基づいた教科書であるお墨付きをえるために、検定制度をクリアしないといけません。検定制度は、だいたい4年のサイクルで回っているので、そのサイクルにのせて教科書の制作、検定プロセスのクリア、印刷と配布というプロセスを経て世に出て行くことになると思います。学習指導要領は、現行の要領のままでデジタル教科書でも対応可能だということでした。検定制度の方は、デジタル版でも現行の4年サイクルのままでいけるのかどうか、検討が必要でしょう。
著作権の問題は、正式な教科書として採択されれば、大きな課題はクリアできます。著作権法33条に基づいて、教科書は著作権の特例を受けることができ、正規の料金から比べると大幅に安い補償金を支払うことで利用可能になるのです。課題は、現行の規定はやはり紙媒体を想定しているものなので、デジタル教科書が実際に認可される際にはあらためてこの33条の適用について確認する必要があることです。
そして最後に、費用の問題があります。義務教育の教科書は、無償で配布されることになっていますが、その際、デジタル教科書の費用をどうするかという点です。現行の教科書予算はおよそ400億円。デジタル教科書の開発費は、紙ベースの教科書よりも高額になるという試算もあります。そして、紙ベースの教科書とデジタル教科書が並存することになれば、それだけ多くの総経費がかかることになります。ここのところをどうクリアするかがカギになってくるわけですね。
一方、正規の教科書は志向しない場合、つまり「副教材」で構わない場合は、法令上のハードルはぐっと低くなります。学校教育法などの改正は必要なくなりますし、教科書検定をクリアする必要もないので、基本的には、学校や先生が自主的に選ぶ教材としての利用を促進していけばいいわけです。
ただその場合、著作権の問題が壁になります。著作権法33条の特例が受けられなくなるので、一般と同じ著作権料を支払うことになるわけです。補償料に比べると約10倍ぐらいとのこと。つまり、副教材の開発費用が大変高価になってしまい、結果、価格が高くなって導入されにくくなってしまうということですね。教科書ではないので、無償給与の適用もありません・・・。
最大の短所は、任意の教材なので、導入されるかどうかは学校や先生次第になってしまう、ということです。これでは、教育の情報化を推進するエンジンにはなり得ません!
さあどうするか?
というところまでが、今日のワーキングチームでの議論でした。この段階でここまで認識を合わせることが出来たのは、大きな成果だと思います。今後、この大きな課題認識に基づいて、現場の皆さんからのヒアリングを進めながら検討を加えていきます!