本日、午前10時より開催された参議院厚生労働委員会で、与党民主党を代表して質問に立ちました!
議題は「労働契約法の一部を改正する法律案」。すでに何度かご紹介していた通り、日本ではこれまで野放しになっていた、有期雇用契約のあり方に一定のルールを課す、非常に重要な改正法案です。
ただ、今日の委員会での審議時間は、わずか2時間少々。これだけ重要な法案の審議時間としては、はなはだ不十分である感は否めません。しかし、今日のこのタイミングを逃してしまうと、いつ審議、採決出来るか分からない(採決出来なければ、最悪、廃案ということもあり得る)という国会情勢の中で、やむを得ない判断であったと思います。
ただ実を言うと、衆議院の厚生労働委員会での審議が3時間半ぐらい取れていて、そのうち与党が80分の審議時間を得ていたので、かなりの部分、われわれが事前に検討していた法案についての疑問点や懸念点はクリアになっていたのです。つまり今日の私の質疑は、衆議院で積み残された問題、そして、ぜひ政府からぜひ立法趣旨の確認を得ておきたい部分に絞って質問させていただいた、という形だったとご理解下さい。
(答弁する津田政務官(左)と、小宮山厚生労働大臣)
今回の法案のポイントは、以下の三つです。
- 有期雇用契約が5年を超える労働者に「無期雇用転換申し込み権」を付与する(無期転換ルール)(18条)
- 雇い止め法理を条文化する(19条)
- 有期と無期との間の不合理な労働条件格差を禁止する(20条)
この3点をセットでしっかり運用していくことで、これまで全く野放しだった有期雇用に一定のルールを課し、より労働者の雇用の安定や、公平・公正な処遇に実現につなげていくことができます。
今回、例えば入り口規制(有期雇用の原則禁止)などが盛り込まれなかったことや、有期転換が5年とされたこと、さらには5年で6ヶ月のクーリング期間が設けられたことなどで、改正案に反対する声も大きいです。しかし、これらの内容は、労働政策審議会で1年もの時間をかけ、労使が真摯な議論を尽くし、双方が妥協しながら最終的な取りまとめを行ったものです。
私たちは、そのことに重きを置きながら、一歩でも二歩でも前進を図っていくという選択をさせていただきました。
大事なのは、改正案成立後の実際の運用。今日の私の質疑でも明らかになったように、そこで労働組合が果たす役割は非常に大きいです(特に、18条の「別段の定め」規定を生かすために)。ぜひ、労使が真摯に議論を重ねて、公平・公正な無期転換ルール、そして正規雇用転換ルールを確立していただきたい、そのことを切にお願いして報告とします。
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参議院厚生労働委員会
労働契約法の一部を改正する法律案に関する質疑(2012年7月31日)
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民主党の石橋みちひろです。
今日は時間がごく限られておりますので、早速質問に入りますが、議題となっております「労働契約法の一部改正法案」は、この日本で、過去およそ20年間にわたって続けられてきた雇用の流動化・不安定化政策に歯止めをかけて、雇用の安定と、公正・公平な処遇を取り戻していくための大きな政策転換であって、日本の将来にとって大変重要な法案です。
そういう観点から、まず改正案の一番のポイントである「5年超の無期転換ルール」について、これが本当に、雇用の安定化だけでなく、処遇の改善にもつながるのか、という点についてお伺いします。
1. 無期転換に際する「同一の労働条件」規定の意味(第18条関連)
労働者が大変心配しておりますのは、18条後段にある「同一の労働条件」という規定と、「別段の定めがある場合」という規定の効果です。これが、雇用が無期化しても、賃金などの処遇は固定化されるのではないか、むしろ、引き下げにつながるのではないか、という懸念を引き起こしています。
そこでまず、ここで「同一の労働条件」と規定した立法趣旨を再確認させて下さい。
政府参考人(金子順一君)
有期労働契約が五年を超えて反復更新された場合に無期労働契約に転換する権利を設定するに際しまして、期間の定め以外の労働条件を確定する必要がございます。こうしたことから、別段の定めがある場合を除きまして、従前の労働条件と同一の労働条件にすることとしたものでございます。
つまりこの「同一の労働条件」規定は、労働者が18条前段に規定された「形成権」としての「無期転換申し込み権」を行使して無期転換した場合に、雇用の無期化以外の他の労働条件は有期の時と変わらない前提であるから、賃金など処遇面の労働条件も変わらない、という趣旨だということですね。
政府参考人(金子順一君)
委員御指摘のとおりでございます。
では、そのことをきちんと理解すれば、職務や職責等の内容が有期の時と同一であるのにもかかわらず、「別段の定め」を設けて賃金のみを低下させることは立法趣旨に反するという理解で宜しいでしょうか?
政府参考人(金子順一君)
この第十八条の立法趣旨を踏まえますれば、従来の有期労働契約と職務の内容などが同一であるにもかかわらず本制度による無期転換後の労働条件をそれまでよりも低下させること、これは無期転換を円滑に進める観点から望ましいことではないと考えております。
ただ現実の社会では、雇用が有期から無期に転換するといった場合には、それに伴って、使用者が労働者に要求するものがより高くなる、つまり、職務や服務の内容や、職責やスキルの要件などが重くなるケースの方が多いと思われます。
そこで確認ですが、労働者が「無期転換申し込み権」を行使した際に、併せて、労働条件のその他の要素、特に、職務や職責や勤務地などの労働条件がより無期の正社員に近づくような形で変更される場合には、当然、賃金や手当などの処遇についても、それに合わせた適切な改善がなされるべきもの、と理解して宜しいでしょうか?
政府参考人(金子順一君)
労働条件の問題でございますので、様々な要素が絡んでまいります。そういうことで、一般論としてあくまでも申し上げることになりますけれども、無期化に伴いまして労働者の職務や責任が増す場合の労働条件、これにつきましては、それに応じて労使で十分協議の上定めていただくことが重要と考えております。
本来、そのような場合を想定して、本法案成立後に、労使で無期化に際してのルールをきちんと協議し、あらかじめ就業規則等で労働条件のあり方、公正な処遇のあり方を決めておくことが望ましいはずです。それがまさに、「別段の定めがある場合」という規定を置いた趣旨、つまり、労使協議によるルールづくりと労働条件の改善を積極的に期待する、要請する規定だと理解すべきだと思いますが、政府の見解をお願いします。
大臣政務官(津田弥太郎君)
私事ですけれども、私が所属をしておりました金属産業の関係でいいますと、こうした事例の場合どういう扱いになるかなということを想定するわけでございますが、恐らく、無期化になると同時に、いわゆる中途採用と似たような形で位置付けをして、一定の期間を設けて正社員の労働条件との整合性を図っていく、当然職務の内容もスキルアップをしていくということになるだろう、これが常識的なやり方になっていくのではないのかなということを想定をするわけでございます。
今、石橋議員が御指摘をされたように、無期化に伴って労働者の職務や職責が増すように変更される、これは当然そういう流れになることが、働く側も、それから使用者側も期待をしているというふうに思うわけでございますが、当然それに伴って当事者間あるいは労使で十分な話合いが行われて、この新たな職務や職責に応じた労働条件を定めていただくことが望ましいことであるというふうに考えているわけでございまして、この十八条の別段の定めという条文も、こうした趣旨に沿った規定であるというふうに考えております。
2. 「遅滞なく」の時間軸的範囲について(第19条)
次に、雇い止め法理の条文化について、19条に、「満了後遅滞なく」という、判例法理にはない要件を課している点についてお伺いします。
現実には、労働者は「雇い止め法理」のことなど知らないケースがほとんどです。そして、期間満了後、雇い止めをされた後で、労働相談機関や弁護士などの助言を得て初めて知ることになるわけですが、このような知識を得る期間というは、それぞれの労働者が置かれた環境によって大きく違い得るもので、数日後に知るケースもあれば、数ヶ月かかる場合もあります。
この点について衆議院の厚労委員会では「期間満了後でも良い」という政府答弁がありましたが、これはつまり、「遅滞なく」と言っても、合理的な理由があれば、その限りで遅れは許容されるという理解で宜しいでしょうか? 例えば先ほどの例でいけば、全く知識の無かった労働者が、専門家のアドバイスでそれを知った後に遅滞なく行動を起こした場合には、合理的範囲として許容されると考えて宜しいでしょうか?
政府参考人(金子順一君)
遅滞なくという法令用語の意味でございますけれども、これは、一般的には正当な又は合理的な理由による遅延は許容されるものと解されております。
遅滞なく申込みしたかどうかという最終的な判断ということになりますと、個別の事情に則して判断されることになりまして、具体的な基準をお示しすることはなかなか難しいわけでございますが、期間満了の日から本条の申込みするまでの期間が社会通念上許容される範囲にとどまるものであれば、ここで言う満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合に該当するものと解されます。
議員から御指摘のあったような例におきましても、労働者が雇い止めに納得できず、遅滞なく弁護士等の専門家に相談し、その助言を受けて直ちに申込みをするに至った場合であれば、これに該当する場合が多いものと考えております。
3. より正確な実態把握のための統計データの確保について
次に、統計データの関係で確認します。
今回の改正の効果をしっかりと検証し、今後の更なるステップにつなげるためには、有期雇用や無期化の実態を正確に把握することがなんとしても必要です。
衆議院厚労委では、総務省統計局の労働力調査、さらには就業構造基本調査において有期雇用の実態調査を強化するという政府答弁がありましたが、問題は、就業構造基本調査は5年ごとの調査、労働力調査はサンプル数が非常に甘い粗々の推計だという点です。これでは、正確な実態把握は出来ません。
そこで、ぜひ厚労省としてきちんと予算を確保して、有期雇用の実態をより正確に把握出来るような形での統計調査を実施することを検討すべきだと思いますが、どうでしょうか?
政府参考人(金子順一君)
議員から御指摘ございましたように、総務省におきまして、今年の秋以降順次、就業構造基本統計調査、労働力調査について有期労働契約にかかわる調査項目を新たに加える方向で検討が行われると承知しておりまして、これによりまして有期労働契約の実態をより明らかに把握することが可能になるものと考えております。
また、重ねて議員から御指摘ございましたが、厚生労働省といたしましても、改正法の効果を検討するために、有期契約労働者の無期転換や雇い止めの状況などにつきまして、有期労働契約の実態把握のために必要な調査の実施を検討してまいりたいと考えております。
4. われわれがめざすべき雇用のあるべき姿について
残念ながら、もう時間が来てしまいました。
繰り返しますが、今回の法改正は、日本の雇用があまりに不安定化し過ぎてしまった、それが、国民生活を破壊しているだけでなく、多くの国民、とりわけ若者たちが、自分たちの将来や、ひいては日本の将来に希望を抱けない原因になってしまっていて、日本経済や社会にとって大きな将来的リスクになっているという大いなる反省に基づいて、やはり、雇用というのは本来、期間の定めのない(無期の)直接雇用で、安定的かつ公正・公平な処遇であるべきだという国民の声に応えるものだと思います。
最後に、この点について小宮山大臣の見解と、今後のあるべき雇用の実現に向けた決意をお願いします。
国務大臣(小宮山洋子君)
委員御指摘のとおり、非正規雇用が非常に増え、特に若い人たちがそれによって結婚もできない、子供も持てないというような状況は何としても改善しなければいけないと考えています。労働者が希望する働き方で安心して働くためには、やはりおっしゃるように、雇用の基本は期間の定めのない直接雇用であること、また、どんな働き方をしていても公正な処遇が行われるということが大事だというふうに考えます。
この法案では、無期転換のルールですとか不合理な労働条件の禁止などを規定をしています。処遇の改善とか、正社員に向けたステップとなる内容の法案だというふうに考えています。
(以上)