男性が、あたりを見回しながら店に入ってきた。すっと手を上げたオレに気付くと、まっすぐテーブルにやってきた。
「はじめまして。」
「はじめまして。何か飲みますか?」
「いえ・・・。」
「買ってきますよ(笑)」
「え~と、じゃあ、アイスコーヒーをお願いします。」
彼とは正式な用があって待ち合わせた。色々話していくうちに、笑ってくれたり、冗談を言ってくれたり、徐々に打ち解けていく2人の空間が、嬉しかった。
簡単な打ち合わせが終わり、店を出ると軽く雨が降っていた。
「もし他に用があったら、ここでいいですよ。」
「いや、何もないので帰ります。」
「じゃあ、一緒に駅まで行きましょうか?」
「はい(笑)。」
何かの本に、初対面の人のいい所を見つけなさい、と書いてあった。自分の第一印象を良く見せる作業にばかり没頭せず、相手のいい所を絶対に見つけるというノルマを自分に課すといいそう。彼のいい所は、どこだっただろうか。礼儀正しかった。ふざけて冗談を言って笑わせてくれた。席を立つ時、気遣ってくれた。考えながら、ちゃんと話してくれた。口調が優しかった。笑顔がまぶしかった。そしてなによりもカッコよかった。
ここ数年で出会った男の中で、彼は最高の男だと思う。顔・体ともに完璧なのに、まだ若くて仕事の事しか考えてなくて、休みの日にジムに通っていて、それでいて男らしくて優しかった。好きになることはできないが、こういう男性と知り合えたことを誇りに思う。ひとつの大きな目標に出会えてよかったと思っている。