因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

熱帯倶楽部vol.5『旧歌』

2008-08-03 | 舞台
*青木豪作 松村恵二演出 公式サイトはこちら シアターモリエール 3日で終了
 グリングによる『旧歌』公演をみたのは2004年7月であった。これが劇作家・演出家青木豪と劇団グリングの存在を強烈に印象づける舞台となり、以後自分はグリングの公演にほとんど欠かさず足を運ぶようになる。劇中何度も下北沢の「劇」小劇場がまさに場内大爆笑状態になり、それでいて終幕は夏の終わりの寂寥感がしみじみと漂い、忘れられない夜になった。その『旧歌』が違う演出と劇団で上演される。また会えるという嬉しさと同時に、比較せずにはいられないだろうという予感も。

 ある劇作家が自分の劇団員に対してじっくりと当て書きした作品を、別の座組で上演するのはこちらが想像するより難しいことなのかもしれない。グリングの配役が客演も含めて実に適材適所であったこと、同劇団の客演陣はおなじみのメンバーが多く、それではマンネリかというとまったくそうではないことなどが思い出される。青木豪の作品に出演する俳優は、昨年冬の『Get Back!』の片桐はいりは別格として(笑)、際立った個性をみせる人はいないが、作品ごとに違う面を見せ、決してマンネリに陥らない。青木豪の手腕、俳優陣の非凡なることの証左であろう。

 今回の『旧歌』にはベテラン、中堅、若手とさまざまな俳優が出演しており、作品に対する敬意と情熱が伝わってきた。しかし何かどこかがちぐはぐな印象なのだ。自分があまり笑えなかったのは、既に知っている話だからではないと思う。客席の空気ももっと舞台と交じり合って劇場に活気が生まれるのではないか?

 夏の日盛り、言葉にしがたい不完全燃焼感をもって劇場をあとにした。青木豪の作品は間口は広いが演じる側も見る側にとっても思いのほか手強いようだ。今週末に新作『ピース』の観劇が控えている。心して。
 

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