王舎城の富豪、スパッダの子ジョーディカが、栴檀の香木の鉢を空中高く釣るし、「神通を持ってこの鉢を取った者に、与える」と声明した。
目連 (モッガラーナ尊者) と連れ立って托鉢していたピンドラ尊者は、目連に「鉢を取られてはいかが」と勧めたが、目連は辞退して動かなかった。
そこでピンドラは、空中高く飛び上って鉢をとった。人々は喝采した。
仏陀は、阿難 (アーナンダ尊者) からこのことを聞かれ、弟子たちを集め、ピンドラに訊ねられた。
「ピンドラよ、汝が奇跡を現したと言うのは真実か」
「世尊よ、真実であります」
「ピンドラよ、それは出家として、ふさわしい行いではない。汝は卑しい木鉢のために、神通を示した。金銭のために芸を見せるのと、同じではないか。それは、一般の信仰を増進する所以ではない。弟子たちよ、在家の人々に、神通を示してはならぬ」
お釈迦様以外も、悟りを開いた高弟たちは、「空中を自在に飛ぶ」などの神通力が、色々な文献に出ている。
それは、悟りを開く過程で自然に身に着く神通力なのだろう。
神通力目的で修行して身につくものではない。
現代語佛教聖典 (釈尊編) 昭和33年8月10日 第一版発行 日本仏教文化協会 (昔、生駒山 宝山寺にて購入)より。
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