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矢部武 『アメリカ病』 (新潮新書012)

2005年05月13日 14時35分02秒 | 推薦図書
中国・北朝鮮問題や大東亜戦争しか新潮新書は取り扱っていないのではないか、という印象を持たれる紹介が続きました。まあ、そのくらい偏っている出版社であることは、『週刊新潮』の読者の方々ならとうに見抜いてらっしゃることでしょう。

とはいえ、一応新潮社なりにバランスというものを考えている気がします。中国・北朝鮮・ロシアもバツバツなら、アメリカもダメダメだと。

アメリカ病

新潮社

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ゴウ先生、アメリカの大学院留学をお手伝いする英語塾を生業にしていますし、自分も6年間お世話になった国ですから、アメリカの諸問題に関してもアンテナはきっちり張っているつもりです。

当然、この本も出版された当時(2003年5月20日発行)手に取ったと思いますが、その時は買いませんでした。なぜかといえば、すべてが『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『華氏911』のマイケル・ムーアの二番煎じになっていると思ったからです。

今回この企画(新潮新書完全制覇!)に合わせて読んでみました。やはり面白半分な問題の拾い方のような気がして、食い足りません。

特に、データの引用の仕方が杜撰でいい加減なのは困ります。巻末に文献表がつけられてはいますが、正確なデータを知るためにはいちいち一次文献に当たらなければならないという書き方は面倒かつ不親切です。

『日本の国境』や『朝鮮総連』にはそうしたいい加減さがありませんでしたから、残念です。責任は著者にもありますが、担当編集者も責めを負うべきでしょう。

それでも以下の章に見るべき点があるのは救いです。

  第一章 「つねにポジティブである」ことに疲れたアメリカ人
  第四章 ポリティカリー・コレクトという原則論
  第六章 「誰にも平等なチャンスが与えられている」のウソ

まず、アメリカ人=フレンドリーな人々と捉えているミーちゃんハーちゃんには冷や水をかける第一章です。フレンドリーな人もいるアメリカ人というのが正しいことを意外と知らないのです。当然、だれでもかれでも優しくはないですよ。同じく、中国人=ずるい人も間違いだとゴウ先生は思っていますから。

そしてアメリカ留学する諸君によく話を聞かせるのは、アメリカン・ドリームの矛盾です。イエローである日本人は、白人と同じレベルのことしかしなかったら認められないのだと口が酸っぱくなるほど繰り返します。死ぬ気で頑張った人にチャンスを与えられる場合もあるのがアメリカン・ドリームです。単純にがんばれば成功するわけではないのです。(第六章)

そして日本では実に不可解な「ポリティカリー・コレクト」という概念が第四章で取り上げられます。日本でも「めくら」「おし」「ちんば」「せむし」「びっこ」などの言葉が差別語として公に使うのを控えるのが大人の態度だと言われています。最近は「痴呆症」までが差別語になってしまい、「認知症」という用語が誕生しました。

先駆者としてのアメリカ社会ではこうした言論統制が極めて厳しいものです。ゴウ先生の恩師(白人)も、1990年当時ある場所での発言が人種差別にあたると糾弾され、闘っていたものでした。ゴウ先生が見る限り、恩師には確かに有色人種にはキツイ性格の部分もありましたが、糾弾されるほどのことはなかったのではないかと思います。きちんとしていたら可愛がってもらえたものです。言論の自由が憲法で保証されている国なのに、おかしな話ですよね。

というわけで、ゴウ先生ランキング:B-/C+

推薦図書としては、ギリギリのラインに位置する本です。アメリカのことなら何でも知りたいという方の入門書としてどうぞ。
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2 コメント

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勉強になります。 (IS)
2005-05-13 22:30:13
中国人=ずるい人が全てでは無いということでいかに自分がものを見るとき、是々非々ではなくゼロ-サムになってしまっているか気が付かされました。



現実をしっかりと正しい尺度で捉えるゆえにラング=格付けの信用性があると勉強になりました。
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ありがとうございます (SPECIALIZED)
2005-05-14 06:22:31
アメリカに対して、一種の幻想のようなものを抱いてしまっているところがありますので、是非とも拝見してみたいと思います。ご紹介頂きまして誠にありがとうございました。
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