中国人の変化について興味深い考察が述べられた昨年末の『ダイヤモンドOn Line』の記事です。記録しておきましょう。
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China Report ―中国は今― 【第141回】 2013年12月20日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
落胆して帰国する日本人観光客
観光でも進む「脱中国」の動き
年末年始の海外旅行需要が好調に推移している。カレンダーの日並びが良いことに加え、個人消費の持ち直し傾向が見られるためでもある。
好調といわれる海外旅行だが、大手旅行代理店では奇妙な現象が起きていた。あれほど人気だった中国旅行のパンフレットが、店頭から忽然と姿を消していたのである。
12月のある日、都内の某大手旅行代理店店舗に立ち寄った。所狭しと陳列される旅行パンフレットはおなじみの光景だが、どこを探しても中国が見当たらない。代理店職員に尋ねてみると、「中国旅行はすっかり需要がなくなってしまったんですよ」と言う。
近年、日本からの出国者数は増加を続け、2012年は約1850万人が渡航した(日本旅行業協会)。そのなかでも渡航先のトップは中国で、351万人が訪れた。2位の韓国、3位のアメリカを大きく引き離す、そんな“断トツの中国”が、今年、旅行市場から“退場”したのである。
日本人が中国観光を遠ざける傾向は、中国側の統計数字にも表れている。中国国家観光局の発表によれば、2013年9月に観光やビジネスなどの目的で中国を訪問した日本人旅行客は、前年同月比7.29%減 の23万4200万人で、15ヵ月連続でマイナスとなった。
過去を振り返ると、日本からの訪中客数は、2012年8月までは月間30万人台を維持してきた。ところが、あの反日デモを境にして、同年9月以降は月間20万人台に激減した。また、年間で見ても年々減少の一途だ。上海万博があった2010年には日本から373万人が中国を訪れたが、11年には366万人(前年比1.8%減)、12年には352万人(前年比3.8%減、10年比で5.6%減)となった。09年までは、訪中客の多さは日本が圧倒的だったが、それ以降は韓国に取って代わり、日本からの中国訪問の積極さは、徐々に弱まる傾向にある。実際、筆者も日中を往復するフライトで、今年は日本人観光客を見ることはほとんどなくなった。
中国渡航者が減少した原因は、言わずと知れた尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化であろうが、大気汚染や食品安全など健康被害の懸念も、日本人観光客の敬遠を招いている。
遠路はるばる尋ねた先で
「日本人」を理由に入園拒否
もちろん、中国旅行に関心を示す日本人はゼロではない。だが、「いい思い出が残ったか」という問いに「決してそうではない」と答える日本人は少なくない。茨城県出身・50代男性のAさんもそうだった。
Aさんは2013年春、雲南省を訪れた。目的地は雲南省最南端にあるタイ族の自治州・西双版納(シーサンパンナ)。象や虎、豹、孔雀などの野生動物の宝庫として知られており、この男性は野生の象を見ることを何よりも楽しみにしていたという。
時間に縛られない自由旅行だった。シーサンパンナの中心地、景洪までたどり着くと、Aさんは地元の旅行社が扱うパッケージツアーに参加を申し込んだ。この時点では、「反日感情」が気になったとはいえ、楽しい旅を満喫していた。ところがその先、思いもかけない事態が待ち構えていた。
景洪からバスに揺られて1時間半、Aさんを乗せたツアーは、ようやく野生の象が暮らす「野象谷」に到着した。
バスが停車すると、現地従業員がやにわにバスに乗り込み、乗客の身分証をチェックし始めた。バスの乗客の多くは国内旅行を楽しむ中国人だったが、そのなかに1つだけ赤いパスポートを見つけた。それがAさんのパスポートであり、これを手にした従業員は顔色を変えた。
「お前は日本人か。日本人はこの公園には入れない」
これまたどういう理由なのか。日本人観光客だけを除外しようとする態度が腑に落ちなかったAさんは聞き返した。
「なぜ日本人ではだめなのか」
すると返ってきたのは、「島の問題があるからだ」と言う言葉だった。
尖閣諸島をめぐる日中関係はこんなところにまで、しかも半年を経てもなお、暗い影を落としていた。同乗していた中国人観光客はすべて野生動物が見られるという観光スポットに向かったが、Aさんはひとり来た道をタクシーに乗って引き返す羽目になった。
今や珍しい日本人団体観光客
行動はまるで「隠密旅行」
これも半年ほど前の話だが、筆者は上海発東京行きの飛行機の中で、日本人の団体観光客と一緒になった。当時(現在も)、日中間を行き来する日本人の団体観光客は珍しく、声をかけずにはいられなかった。
隣に座る日本人のご夫婦と挨拶を交わした。「どちらからお戻りですか」と尋ねると、「雲南省から」ということだった。聞けば、ご主人の酒井昭夫さん(70歳)は写真家でもあり、10年の歳月をかけて中国全土を撮り歩き、渡航は15回以上にものぼるという。
反日感情いまだ冷めやらず、といったさなかに中国に渡航するというだけでも、その勇気はたいしたものだ。しかし案の定、「現地では緊張の連続だった」と酒井さんは打ち明けた。
「ツアー名の入った旗すら掲げず、極力日本人とわからないような行動は、まるで隠密旅行のようでした」
だが、筆者が驚かされたのは、根深く残る反日感情よりも、「中国観光旅行」の質そのものの劣化だった。
ぼったくりなどは当たり前で、食堂ではメニューに書いてある値段の倍も高い料金を請求された。その理由は単に「塩味を薄めに、と(日本人観光客が)注文をつけたからだ」と言う。観光地では、うっかり寄りかかった手すりに「課金」された。地元民が場所を囲い込んでおり、“ショバ代”を請求してくるのだ。
さらに酒井さんは、雲南という中国きっての観光地の、その近年の変化を次のように語ってくれた。
「雲南は好んでよく訪れる土地でした。そこを訪れるのは日本人や外国人だけではなく、中国各地からの観光客もいます。ところが最近は、撮影スポットの奪い合いでね。絶景ポイントとなると、もう三脚の置き場もないくらいなんですよ。混み合えば、詰めて一人でも多く入れてあげよう、というのが日本人の考え方ですが、ちょっと譲ったがためにこっちがとばっちりを食うのが、今の中国…。場所を譲ったがために、割って入った中国人からはいつの間にか、あっちへ行けとばかりに追い出されてしまうんです」
「金持ち」の自意識も背景か
マナーが消えた観光地
こうした撮影スポットでの譲り合いは、日本の写真家の間では、当然のマナーとして定着している。だが、中国でそんな親切心を起こそうものなら、たちまち仇となって返される。この観光地での出来事は、そんな世知辛い中国の現実を見事に象徴するものだ。しかも、彼らの傍若無人な振る舞いをさらに助長するのは「自分には金がある」という自意識だ。
「今どきの中国人観光客は、われわれ日本人も持たないようなカメラを手にしています。本体で100万円、レンズで25万円、三脚で15万円、しかもレンズは3~4個持ち歩いているわけで、ざっと200万円を超える装備ですよ」
観光客が夢中でシャッターを切る現場に、有力者とおぼしき中国人がノシノシと割って入る。付き添いの者たちが「ここを離れろ」と一般観光客を蹴散らす。その有力者はやおら高級カメラを取り出し、絶景スポットでバシバシと被写体を撮りまくった。
展望台などでは、中国人の女性が写真を撮ってもらおうと、得意のポーズをとる。だが、そばにいる日本人観光客が邪魔だというので、彼女は日本人の老人を力づくで押しのけた。
酒井さんが目撃したのは、雲南の美しい菜の花畑や棚田を前に繰り広げられる、そんな壮絶な「撮影スポット争奪戦」だった。
「昔はこんなではなかった。観光客同士、あるいは茶店の主人とも会えば『コンニチハ、ニーハオ』ができた。身振り手振りで話したり、一緒にお茶飲んだり。これが中国の旅の醍醐味でもあったんですがね」
旅先での人々とのふれあい。場所によっては、そんなことを期待するのはどうやら難しくなってしまったようだ。中国人観光客からはすれ違いざまに「日本人か」と蔑まれ、中には日本人への敵対心を丸出しにしてくる者もいるという。
中国、怖い
筆者は今年12月、連絡先を交換した酒井さんに、再び電話を掛けてみた。次の中国旅行の計画を尋ねようと思ったためである。ところが返ってきたのはこんな言葉だった。
「中国、もう怖くて行けないですよ」
酒井さんにとって最後の中国旅行となったのが、2013年の早春だ。今では時の流れとともに、現地の観光地事情も少しは日本人にやさしくなっただろうと思いたい。しかし、こうした反日感情はさておいても、観光地の質の劣化はどんどん進行するばかりだ。
外国人だろうと中国人だろうと、観光客から寄ってたかって剥ぎ取ろうというのは、中国のいずこの観光地に共通する現象であり、また中国各地から集まる観光客の「われ先に」というマナーのなさが露骨に現れるのも、この観光地においてである。
観光旅行もまた欠かすことのできない日中の民間交流の一手段であるが、渡航してみたものの、結局失望して帰ってくるのが関の山だ。しかも、その失望は現地の“理不尽な価格”や“変わり果てた観光地”のみならず、人そのものにあるのだとしたら、これ以上の悲しい旅はない。
中国の鉄道旅行を趣味にするBさん(40代)も、こう語る。
「昔のような和気藹々とした車内の交流も、残念ながら今では、ほとんど期待できなくなりましたね」。近年はほとんど中国を訪れなくなってしまったという。
前出の酒井さんもまた、「昔の中国人はこんなではなかった」と肩を落とす。旅人の、先入観のない心に映し出される、あまりにも世知辛い現代中国の姿。もちろん、中にはいい出会いもあるだろう。だが、「中国の旅の愛好家」たちですら、徐々に中国から背を向け始めているという現実は、決して無視できるものではない。
そんな傾向が現れるのは、観光旅行だけではない。修学旅行などでも中国が行き先として取り上げられなくなってきている。数年前までブームを維持した「語学留学」も同様であり、ビジネスにおける人の動きさえも、中国ではなく東南アジアに向かいつつある。日本人の関心のベクトルは、明らかに“脱中国”を示し始めているのだ。
中国に彼ら日本人観光客の思いは届くだろうか。隣国からの大切な友人、大切な顧客は、再びこの地に戻ってくることができるのだろうか。
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「恩を仇で返す」
結局のところ、拝金主義に陥った中国人はこの言葉で表現すべき存在になってしまったということです。日本の何兆円というODAによってここまで経済復興してきたにもかかわらず、日本に対してまったく敬意・感謝がないのですから、当然のことでしょう。
こんな中国には、魅力はありません。脱中国。当然の流れです。
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