アメリカの喫煙事情をウォール・ストリート・ジャーナル紙がまとめています。記録しておきましょう。
**********
米ではまだ4000万人が喫煙
By Mike Esterl, Karishma Mehrotra
The Wall Street Journal 2014 年 7 月 16 日 12:56 JST 更新
米国の成人の喫煙率は半世紀前の40%以上から20%以下にまで低下した。貧しく、学歴の低い人たちがたばこを吸う傾向がますます強まっている。多くの喫煙者たちは自分たちを「たまにしか吸わない喫煙者」、あるいはソーシャル・スモーカー(1人では吸わず他の人と一緒の時だけ吸う人)と呼び、依存症にならないように意識的に抑制しているとしている。
しかし、現在の米国にはまだ4000万人以上の喫煙者がいる。また、全般的な傾向からは、成長の余地がうかがわれ、たばこ業界が大きな関心を寄せている。
喫煙率はゲイやレズビアン、両性愛者で高く、業界はこの層をターゲットにしている。吸うたばこをロリラード社の最大のブランド「ニューポート」などのメンソールに変える米国人が増えている。実際これは、レイノルズ・アメリカンが250億ドル(2兆5400億円)のロリラード買収計画で増やそうとしている重要なブランドだ。
米国人がキャンディーやビールなど幅広い商品で強い味を求めている現在、米食品医薬品局(FDA)が認可した唯一のフレーバーたばこであるメンソールが最も売り上げを伸ばしていることは驚きではない。調査会社シティ・リサーチによると、全体の売り上げに占めるメンソールの比率は2008年の28.7%から今では31.4%にまで拡大したメンソールたばこが口と喉を冷やし、喫煙の習慣化を容易にし、禁煙を難しくさせていることを示唆する研究が発表される中で、FDAは、これを制限することを検討している。
レイノルズの「クール」を吸っているアラスカ州コツェビューのウェートレス、ジェイ・オーさん(29)は「いい味がする」と話した。彼女は米国で最も喫煙率が高い郡(男性41.5%、女性40.8%)に住んでいる。この喫煙率は米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)の最近の研究で明らかになった。
メンソールは特にアフリカ系米国人の間で人気があり、彼らが吸うたばこの80%はメンソールだ。小企業コンサルタントのボー・M・マーシャルさん(40)は15日朝、ノースカロライナ州ローリーのタバコ&ギフトで、「キャメル・クラッシュ・メンソール」を1箱買った。このレイノルズのたばこは普通に吸えば普通のキャメルの味だが、フィルターのロゴをつぶすとメンソールの香りを味わうことができる。
レイノルズはまた、「有機」を売り物にして、「ナチュラル・アメリカン・スピリット」を販売している。アーカンソー大学で環境科学を学ぶラッセル・ミックさん(27)は自分でたばこを紙に巻いて吸っている。彼は「これは『ヘルシー』だ」と、宣伝の言葉を引用した。
たばこ会社はLGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、性転換者)社会でのマーケティングを強化している。6月に発表された政府の調査結果によると、LGBTの喫煙率は27.7%で、異性愛者の17.3%を大きく上回っている。嫌煙団体「レガシー」によれば、この高い喫煙率は社会的ストレス、酒場通い、それに高い飲酒率に関連している可能性がある。
喫煙率は地域によって大きく異なる。ギャラップの調べでは、主要なタバコ葉産地であるケンタッキー州は昨年、30.2%で全米トップだった。次いでウェストバージニア、ミシシッピの比率が高い。最も低いのはユタ州で、次いでカリフォルニア、ミネソタの順。
ミシシッピ州ビックスバーグのレストラン従業員フェリシア・ジェームズさん(34)は20年間吸い続けているが、居心地が悪い思いをしたことはないと話した。ビックスバーグは、男性の喫煙率が1996―2012年に年率で1.1%上昇したイサケナ郡の近くにある。同郡の上昇率は米国の全ての郡の中でトップだ。メンソールのニューポートを吸うジェームズさんは「たばこを吸わない人はいないかのようだ」と話した。
連邦と州の物品税の引き上げにもかかわらず変わらないことがある。所得が少なくなればなるほど喫煙率が高くなる傾向だ。政府の調査によると、貧困ライン以下の成人国民の12年の喫煙率は27.9%と、同ライン以上の国民の17%を大きく上回った。別の政府調査によると年間所得が10万ドルを超える世帯では9.3%だ。
しかし、喫煙率の高い州のたばこは相対的に安い。子供をたばこから守る活動をしているCampaign for Tobacco-Free Kidsによると、喫煙率上位10州の平均たばこ税は12年時点で1箱0.82ドルにすぎなかった。これに対して同率が最も低い10州の平均は2.42ドルだ。
米国の喫煙者の約70%はたばこをやめたいとし、50%は毎年やめることを試みていると答えている。前出のマーシャルさんは「やめなければいけない。何度もやめようとしたことがある」と話した。
喫煙者の多くはこの習慣を恥じている。アトランタの法律事務所に勤務するドナ・D・シャープさん(59)は30年にわたり、ニューポートを1日に半箱吸ってきた。彼女は「今では完全に社会ののけ者だ」と話した。ディナーパーティーでは話の輪から外れてたばこを吸い、仕事中はオフィスの外に出てたばこを吸う。「みっともない最悪の習慣だ」と話す。
しかし、この習慣を絶つのは難しい。さまざまな調査によると、実際にはどの年であっても、禁煙を試みた人の20人に1人程度しか成功していない。
カリフォルニア州クパチーノ在住のエンジニアリング・コンサルタント、ビベク・ドゥタさん(65)は24歳のときに吸い始め、「マールボロ・ゴールド」を毎日1箱吸う。ただし、彼はたばこを半分までしか吸わない。こうすれば、吸い込むタールの量が少なくなると思っているからだ。
チャック・ラシュトンさん(63)は10代のときに喫煙を始めたが、当時のたばこの価格は1箱0.35ドルだった。現在はノースカロライナ州ローリー南西部の小さなショッピングモールにある「NCタバコ」という店で毎週「ドラル・ゴールド」を1カートン(10箱)買うのに約48ドルを費やしている。彼はこの店の常連だ。彼はやめたいがそれができずにいると話す。「ガムも、パッチも、催眠術も、コールドターキー(断煙)も試したけど、もって4日だった」という。
彼の医師は電子たばこへの転向を勧めてきたが、彼は他の多くの人々と同様、電子たばこは普通のたばこではないと感じている。彼は電子たばこが「携帯式の水たばこ」のように見えると思うと話す。マーシャルさんは電子たばこを信用していない。「あれには何が入っているか分からない。FDAに認可されているとは限らない煙を吸い込むのは理解できない」と話す。
アーカンソー大のミックさんによると、喫煙者の友人の大半は電子たばこに乗り換えたという。便利だからというのが理由だ。だが、ミックさんも試してみたが、「魅力を感じなかった」という。
**********
2012年の時点で、米成人の18%、4200万人がタバコを吸っているわけですが、所得・教育・人種・性癖によってその喫煙率が大きく変わります。日本も同様の調査を頻繁に行い、より国民の健康を正確に把握すべきだと思うのですが、厚生労働省はしていません。成人の3割近くが喫煙者であり続けるはずです。
ともあれ、所得・教育・性癖に関しては、日本もアメリカと同じ傾向があるのではないでしょうか。となれば、国民の教育レベルを上げて、収入を増やすようにすれば、喫煙率は下がるわけですから、国としても決して損ではない話です。為政者たちが本格的な禁煙政策を実施することを強く望む所以です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます