アミューズソフトエンタテインメント
隣人13号
ううむ。。。
出来の善し悪しで言えば間違いなく「良く出来ている」と思うのだが、
「面白かったか」と言われると返答に困る。
この映画をとにかく褒めろと言われれば、
映像のセンスや役者の演技、印象的な効果音など、
いくらでも褒めどころはあるのだが、
それらの長所が「面白い」に結びついていないように思う。
かと言って「つまらない」わけでは全くない。
この簡単に「面白い」と言わせない後味の悪さが
「隣人13号」の持ち味なのかも知れない。
「13号」の化け物じみた思考や行動の元を手繰っていけば、
村崎十三が受けてきた数々の陰湿ないじめを描く必要があるのは分かる。
が、ここで描かれるいじめには容赦がない。
小学校時代にしても現在にしても、
本当にその辺で起きていることを盗み撮りしたのではないかというほど
ストレートに描かれており、
「現実は映画のようにはいかない」という捨て台詞すら粉々にしてしまう。
綺麗事もなければ奇跡も起きない、永遠に続くかと思われる救いの無さに
思わず「13号」の出現を願い、
「殺ってしまえ」と言ってしてしまいそうになる。
そして、願い通りに現れた「13号」の
あまりの残虐ぶりに、今度は「そこまでやらなくても・・・」
という思いが頭を擡げてくる。
「隣人13号」を観ている間の私は、
クラスの中でいじめが起きていることも知っていて、
敢えて見て見ぬ振りをする傍観者と同じだったのだと思う。
だからこそ、一抹の後ろめたさから素直に「面白い」とは言えないのだ。
私が印象深かったのが、
追い詰められた赤井が「何年前の話だよ」と呟くシーンだ。
あの一言は、「いじめた側」と「いじめられた側」の温度差を
上手く言い表していると思う。
「オールドボーイ」も似たような落とし方の映画であったが、
「オールドボーイ」のイ・ウジンには、
オ・デスを15年監禁し、執拗に追い回すに足る理由があった。
しかし「13号」は、他ならぬ十三本人ですら
そこまでの復讐を望んではいないように見える。
「13号」が十三に向かって
「いい加減、お前も解放しろよ」と言うシーンがあるが、
あの言葉が十三の心の内を知ってのものなのか、
単に自分側に引き込む為に唆しただけなのか、
同じ体に宿る人格の言うことだけに判別がつかない。
多重人格を描いた作品は過去にも多くあるが、
「一寸の虫」の中に眠る「五分の魂」が
虫の体を喰い破って表出する様を
これほど上手く表現した映画は無かったように思う。
「13号」を演じる中村獅童も素晴らしかったが、
「羊のうた」を思わせる小栗旬の抑制の利いた演技も素晴らしい。
PUFFYの吉村由美は、、、おそらくまんまと思われる。
平川地一丁目の主題歌も抜群にハマっている。
これが初監督となる井上靖雄は
「ファミコンミニ」のCMでPUFFYが「リンクの冒険」(ではなかったか)を
遊んでいるバージョンの監督も務めたそうだ。
吉村由美に白羽の矢が立ったのは、その辺もあるのかも知れない。
色々と事件の絶えないご時世だけに
頭の固い大人達が観たら間違いなく有害図書認定を受けそうな作品ではあるが、
出来れば16歳以上(本作はR-15指定)で、
今現在「学校」と名の付く所に通っている人達にこそ観て欲しい。
アミューズソフトエンタテインメント
隣人13号 SANTASTIC ! BOX
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:隣人13号
配給:メディア・スーツ
公開日:2005年4月2日
監督:井上靖雄
出演:中村獅童、小栗旬、新井浩文、他
公式サイト:http://www.rinjin13.com/
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