■DVD:「Shall we Dance?」
アジアの映画が続々とハリウッドに買われる時代になってきたが、
ハリウッドリメイクされた作品はどうも今ひとつな物が多い。
日本から大量に「輸出」されているホラー映画も、
興行的な成功とは裏腹に、
原作そのままの面白さを再現している物は少ないような気がする。
「リング」のように別物になってしまっても悲しいし、
「JUON」のようにそのままというのも物足らない。
「原産国」に住む者の意見は贅沢なものだ。
今回紹介する「Shall we Dance?」は、
原作のどの部分が日本的(日本人特有の感覚)で、
どの部分が世界共通の面白さであるかを
きちんと見極めた上でリメイクされた数少ない成功例だと思う。
「日本産の映画なんだから監督も日本人に任せよう」という
最近の流行に一石を投じる価値ある一作だ。
まず、日本版では役所広司が演じていた主人公を
リチャード・ギアが演じているのだが、
性格や考え方、置かれた状況が似ているようでかなり異なる。
役所が掴み所のない物足りなさからダンス教室で働く草刈民代に
ほのかな恋心を寄せ、やがてダンスにも没頭していくのに対し、
ギアの場合は今の生活にさほど不満があるわけではなく、
ジェニファー・ロペスに対する下心も草刈に対する役所ほども持っていない。
役所が「あわよくば・・・」なら、
ギアは「話だけでも・・・」という感じだ。
そしてその微妙な温度差が、エンディングで決定的な差を生むことになる。
家族の最小単位がどこにあるのか、ということに関しては、
アメリカ人の答えはいつも明快だ。
「憧れの君」を演じる二人もかなり違う。
周防監督が草刈を指名したのは、控えめな色気と清楚な雰囲気、
凛としたダンスに惚れ込んでのことと思うが、
ジェニファー・ロペスには
「控えめな色気」も「清楚な雰囲気」も無理である。
ダンスに関しても、「美しさ」を優先した草刈より遥かに動物的な
「色気最優先」の踊りを見せているが、
これがダメかというとそうでもない。
むしろ、ギアとのコントラストとしても、
スーザン・サランドン(ギアの妻役)の敵役としても正解だ。
日本版では登場していた草刈の昔の恋人や父親が出て来ないのは
物語の比重をギアとロペスの恋物語ではなく、
ギアの家庭に持っていくためであろう。
もちろん、周防監督の贔屓も多少はあったと思うが。
(監督はこの作品がきっかけで草刈と結婚した)
脇役のキャラクターに関しても日本版とほぼ同じだが、
日本版の竹中直人や渡辺えり子ほど「やり過ぎ」ないため
観ていてとても軽く、全体のまとまりも良くなっている。
竹中直人のポジションを演じたスタンリー・トゥッチは
つい最近「ターミナル」でトム・ハンクスを追い出そうと画策する
嫌味なフランクを演じていたのを見たばかりだったので
あまりの違いに驚いた。
「ターミナル」を観た方で本作も鑑賞予定の方は
その辺も気にしながら観るとより楽しめるはずだ。
尺が日本版に比べ20分ほど短くなっているが、
練習シーンなどを端折っているだけで重要な部分は
全て残してあるため、どこを切ったのかも分かりにくい。
2時間に収めたことでテンポもぐっと良くなった。
日本版特有の小ぢんまりとした作りがお好みの方も多いであろうし、
あまりにも出来過ぎなラストはファンタジーではないかという
突っ込みも予想されるが、私はファンタジーで良いと思う。
キレイキレイな夢もたまには見たい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:Shall we Dance?
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
公開日:2005年4月23日
監督:ピーター・チェルソム(「セレンディピティ」)
出演:リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、他
公式サイト:http://www.shallwedance-movie.jp/
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