
角川エンタテインメント
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語スペシャル・エディション
「ハリー・ポッター」シリーズがワーナーのドル箱となって以来、
各映画会社が我も我もと人気のファンタジー小説を映画化している。
ディズニーが「ナルニア国物語」(日本では06年春公開予定)に
唾をつけたならと、ドリームワークスが唾をつけたのが
今回紹介する「世にも不幸せな物語」である。
全世界で3000万部以上を売り上げている
レモニー・スニケットの大ヒット小説の映画化だ。
当然、シリーズ化も視野に入れての映画化であろうが、
予想以上にコンパクトにまとめられた印象を受けた。
と言っても決して悪い意味ではなく、
「ハリー・ポッター」などでは決して見られない
手作り感の残る童話っぽさがジジィの私には心地良かった。
「ハリー・ポッター」と「世にも不幸せな物語」の違いは、
テーマパークか遊園地かの違いに似ているかも知れない。
チラシにもデカデカと書いているので御存知の方も多いと思うが、
本作にはジム・キャリーが出演している。
チラシ画像の左上で目をギョロつかせているのがジムだ。
ボードレール三姉弟にあの手この手で意地悪を仕掛ける
オラフ伯爵を嬉々として演じている。
今回のジム・キャリーは「マスク」を彷彿させる七変化ぶりで
「マスク2」の出演を断った見返りかというほどに弾けているのだが、
この物語が不幸に立ち向かう「三姉弟の物語」であることを考えると、
膨らみ過ぎたジムの力こぶが全体のバランスを若干壊している気がする。
ピーターパンよりフック船長が目立ってしまっているようなものだ。
悪役は主役を喰うほどのインパクトがある方が良いが、
完全に主役を喰ってしまってはいかんと思う。
相手が子供なら尚更だ。
三姉弟の長女を演じたエミリー・ブラウニングも
長男を演じたリアム・エイケンも、
共に幾つもの作品をこなしてきた
売れっこ子役だけに安定感は抜群なのだが、
「発明の天才」(長女)「記憶力抜群の本の虫」(長男)
「何でも噛み付く幼女」(末っ子)という各姉弟の設定が
物語の中でもうひとつ上手く機能していないのが惜しい。
一応それぞれの見せ場は用意されているが、
オラフ伯爵の攻めが強力過ぎて防戦一方なのだ。
たまにはやり返すぐらいのパワーが欲しい。
今回はあくまでも序章ということで、
各々の特色はこれから少しずつ出していくのかも知れないが。。。
とは言え、この三姉弟に関してはベストなキャスティングだと思う。
続編があるなら、子供達が成長し過ぎて
キャストの変更を余儀なくされる前に作って欲しい。
続きモノにありがちな中途半端な終わり方はしないので、
今作だけでも充分に楽しめる作りになっている。
伯爵と両親にまつわる謎解きも含め、
大人も楽しめる隠し味も満載だ。
「もう『ハリー・ポッター』は卒業」という人が
次に入学するにはぴったりかも知れない。
ただ、個人的にはティム・バートンに撮ってもらいたかった。
ティムなら、より大人向けのファンタジーに仕上げられたはずだ。
オラフ伯爵はもちろんジョニー・デップで。
*2回目の鑑賞で印象がグッと良くなった為、
前回掲載時より若干修正した。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
配給:アスミック・エース
公開日:2005年5月3日
監督:ブラッド・シルバーリング(「ムーンライト・マイル」「キャスパー」)
出演:ジム・キャリー、メリル・ストリープ、ジュード・ロウ、他
公式サイト:http://fushiawase.jp/
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