腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE40 浜辺)
掌島の地下の泉の岸に舞台がある。そこに、人魚はあなたの肉体を押し上げる。
古い蝋燭に灯が灯る。舞台の奥の洞窟の前にある椅子の上で、おばあさんが生まれる。
あなたが死んでいるから、おばあさんは生まれることができる。
おばあさんは、あなたの脚と人魚の尻尾を取り変えてやる。
「なぜ脚が欲しいんだい?」
「歩くためだよ」
「なぜ歩くのかい?」
「靴を履くためだよ」
「なぜ靴なんか……」
「歌を集めるためだよ」
人魚、いや、人間になった姫は、靴を探しに出かける。
人魚のあなたは息をしない。おばあさんは、あなたを水に戻す。渦を巻く水。やがて渦は消え、水面に蝋燭の炎が映る。
オンディーヌ・ジャンプ!
一回転半。飛び散る水滴。
あなたは人魚として蘇り、掌島の砂浜で悠々と裸身を曝す。
あなたが藪に身を隠すのは林檎を齧るときだけだ。ママの真似。
日が沈む。日が昇る。
朝の光を浴びて、あなたの傷口あるいは欠落の全部がぱくぱくする。
あなたは、そんなあなたを許せますか。
許せるのなら、そろそろ、帰りましょう。
「どこへ?」