このリハビリ施設に移った数日後、大学の教授を名乗るいかにも「教授」な風格のおじさまが病室に登場。
横たわるダニーの元へやってきて事の経緯と損傷した脊髄の箇所と現状を尋ねてきたの。
それに丁寧に答えるダニー。
おじさまは聞いてきたわ。
「学生を呼び入れてもいいですか?」と。
ダニーが了承すると感謝の意を述べて一時退席。
そしてすぐに、ぞろぞろと5人の若い子たちを連れてやってきたわ。
おじさまはダニーの毛布を取ると、うっ血防止の為に足に巻かれていた物も取り、もう動くことの無い足を学生達の前にさらしたの。
そして学生達は代わる代わる神経を失ったその足を専用の道具で叩いたり、突いたり。
次はシャツをまくり上げて、神経が残る胸とその下の境目とをやはり突いて感覚の確認。
それが終わるとおじさまがダニーの腹部を強く押した状態で色々と説明を始めたのよ。
その時間の長さと深く食い込んだ指がどうにも我慢ならなくて、「もうやめて下さい。いくら何も感じないからって強く押しすぎじゃないですか?」とおじさまの手を払いのけてしまったあたし。
玄人を相手に出すぎた真似してごめんなさいね。
でも身内として許せなかったのよ。
謝罪の言葉と共にすぐに離してくれた教授。
ダニーも「大丈夫だよ、心配しないで」って言ってたけど、するっちゅーの。
「はい、もう終わり。帰った帰った」と口で言わずとも態度で示そうと、捲りあげられたシャツを元に戻し、お腹まで毛布を掛けていると始まったのは質問タイム。
学生の一人が「交通事故で半身不随になってどんな気持ちですか?」って聞いてきたの。
おーい、空気よめー、馬鹿かオマエー、でも医学生じゃ世間一般的には賢いんだろうなー、学費は親持ちか?そうだろうなー。このちんちくりんがー、将来は研究室に篭って絶対世間にでてくんなよー
なんて思いが頭の中をぐるぐるしてたら当のダニーが言ったわ。
「首も両腕も大丈夫だから自分はラッキーだ。この施設で半身不随でも日常生活を送る訓練をしてもらえる。もっと最悪な事態も考えられたのに自分は本当にラッキーだ」って。
あの日以来、痛みに対して不平を口にするものの、それ以外の悲観や不満を一切言わない亭主。
現状をまだ受け入れていないのか、起こり得ない「いつか歩ける」という可能性を夢見てるのか、強い痛み止めのせいで頭が働いていないのか、私には理解不能の日々だったけど、その時に思ったのよ。
この施設を出て自分たちだけで生活を始めたときに、初めて苦しい日々に直面するのかもしれない。
でも当の本人が前を向いている間は、腫れ物に触るような言動は止めよう、彼に合わせていつも通りでいようと。
ほら、どうしても話題や言動に気を使っちゃうじゃない?
でもそれは本人が苦難に直面して落ち込んでからでも遅くはないんじゃないかって。
そんな日々が来たら当然、嫁であるあたしにトバッチリが飛んでくるわけで、2人で泣くのは明確。
ならば、現在の医療関係者に完全に頼って訓練してもらっている日々を少しでも笑って過ごせたら、実のあるものにしていけたらって考えたの。
そしたら落ち込んでる場合じゃないじゃない。
なんてったって当の本人が前を向いているんだもの。
言わば終了時間未定のハッピー・アワー。
「いつ終わるか分かんないから、今のうち飲めるだけ飲んじゃおうぜ☆」みたいな。
例えはアレだけど、そんな感じで我々の車椅子生活の訓練が開始しました。
横たわるダニーの元へやってきて事の経緯と損傷した脊髄の箇所と現状を尋ねてきたの。
それに丁寧に答えるダニー。
おじさまは聞いてきたわ。
「学生を呼び入れてもいいですか?」と。
ダニーが了承すると感謝の意を述べて一時退席。
そしてすぐに、ぞろぞろと5人の若い子たちを連れてやってきたわ。
おじさまはダニーの毛布を取ると、うっ血防止の為に足に巻かれていた物も取り、もう動くことの無い足を学生達の前にさらしたの。
そして学生達は代わる代わる神経を失ったその足を専用の道具で叩いたり、突いたり。
次はシャツをまくり上げて、神経が残る胸とその下の境目とをやはり突いて感覚の確認。
それが終わるとおじさまがダニーの腹部を強く押した状態で色々と説明を始めたのよ。
その時間の長さと深く食い込んだ指がどうにも我慢ならなくて、「もうやめて下さい。いくら何も感じないからって強く押しすぎじゃないですか?」とおじさまの手を払いのけてしまったあたし。
玄人を相手に出すぎた真似してごめんなさいね。
でも身内として許せなかったのよ。
謝罪の言葉と共にすぐに離してくれた教授。
ダニーも「大丈夫だよ、心配しないで」って言ってたけど、するっちゅーの。
「はい、もう終わり。帰った帰った」と口で言わずとも態度で示そうと、捲りあげられたシャツを元に戻し、お腹まで毛布を掛けていると始まったのは質問タイム。
学生の一人が「交通事故で半身不随になってどんな気持ちですか?」って聞いてきたの。
おーい、空気よめー、馬鹿かオマエー、でも医学生じゃ世間一般的には賢いんだろうなー、学費は親持ちか?そうだろうなー。このちんちくりんがー、将来は研究室に篭って絶対世間にでてくんなよー
なんて思いが頭の中をぐるぐるしてたら当のダニーが言ったわ。
「首も両腕も大丈夫だから自分はラッキーだ。この施設で半身不随でも日常生活を送る訓練をしてもらえる。もっと最悪な事態も考えられたのに自分は本当にラッキーだ」って。
あの日以来、痛みに対して不平を口にするものの、それ以外の悲観や不満を一切言わない亭主。
現状をまだ受け入れていないのか、起こり得ない「いつか歩ける」という可能性を夢見てるのか、強い痛み止めのせいで頭が働いていないのか、私には理解不能の日々だったけど、その時に思ったのよ。
この施設を出て自分たちだけで生活を始めたときに、初めて苦しい日々に直面するのかもしれない。
でも当の本人が前を向いている間は、腫れ物に触るような言動は止めよう、彼に合わせていつも通りでいようと。
ほら、どうしても話題や言動に気を使っちゃうじゃない?
でもそれは本人が苦難に直面して落ち込んでからでも遅くはないんじゃないかって。
そんな日々が来たら当然、嫁であるあたしにトバッチリが飛んでくるわけで、2人で泣くのは明確。
ならば、現在の医療関係者に完全に頼って訓練してもらっている日々を少しでも笑って過ごせたら、実のあるものにしていけたらって考えたの。
そしたら落ち込んでる場合じゃないじゃない。
なんてったって当の本人が前を向いているんだもの。
言わば終了時間未定のハッピー・アワー。
「いつ終わるか分かんないから、今のうち飲めるだけ飲んじゃおうぜ☆」みたいな。
例えはアレだけど、そんな感じで我々の車椅子生活の訓練が開始しました。