Jerry Emma Laura Piano

Mina, Dalida, Barbara, Laura, Lara....美人大好き! あっ、Mihoが一番好き

源太郎(6)

2013年07月10日 | 腰折れ文

【源太郎】登場人物や設定はすべて架空です。特にこれから、まったくもって想像ですからね。Mihoちゃんに誤解されると困るので。。。。あ、Mihoちゃんの友達と言っても、将来の妻(Makiちゃん)から、七夕コンサートのAnastaciaがいいと、伝言があった。嬉しいですね。パンチのある彼女の歌声はいい。朝からニヤニヤしています。ありがとう。

空港は暑い。航空会社のチェックインカウンターの前に敷かれている絨毯に車輪を取られながら大きなスーツケースを押して玲子が到着した。
「何だよ。この荷物」
「あれもこれもいるでしょ、考えたら、いっぱい」
「笑われるな。一義にね」
「ヤダ。田舎娘に見られてしまう」
「事実だろ。しょうがないよ」
「どうせそうですよ」といいながら、パスポートを提示して受付を済ませた。しばらくすると、一義と香が一緒に搭乗手続きにやって来た。

「遅かったな。何だよ。俺の彼女と一緒かよ」
「すまん。電車一本遅れた」
「遅くはないですよ。源太郎さんが早いだけ」といって、二人は手なれた段取りで手続き終えた。両替から帰って来た玲子は、一義と香を見つけ、丁寧に挨拶して、源太郎から田舎娘扱いされたことを口を尖がらせて一義に言いつけた。すると香が、「そう。アンカレッジのこと、玲子ちゃん知ってる」と言った。
「何ですか、知りません。教えてくださいよ。聞きたいわ。きっと源太郎さんのこと」と玲子が言った。「言うなよ。香さん」「あら、又強気ね」といって、香と一義は顔を見合わせて笑った。

「航空会社に就職していても、私、ビジネスクラス乗ったことないのよ」と玲子は隣の一義に素直に話しかけた。
「そうですか、昔はファーストとエコノミーしかなかったんですよ。初めて源太郎と二人で渡航した時、源太郎は、予約が遅いから後ろの席になったと言って、笑うよね」
「へー。源太郎さんこそ田舎者ですよね。でもこの席なら、何時間でも乗れそうだわ」スチワーデスが、ウエルカムドリンクを持ってサービスを始めた。「何を飲みますか」通路側の一義は、離陸前の飛行機の外の風景を覗き込んでいる玲子に聞いた。
「お酒飲んでいいかしら、でも、私酒癖悪いから、左手に、焼き鳥の串を持って、絡みますよ」
「大丈夫だよ。葵ではないし焼き鳥はないから」といって笑いながら、シャンペングラスを重ねた。

「あいつら、本当にしたしげだな。何か笑っているよ。一義があんなに明るいところに見たことがない」と源太郎が斜め前の二人を除いている。
「あまり見ない方がいいわよ。私、離陸したら少し眠ってもいいかしら」ひざかけをベルトで固定して香が言った。香が少し動くたびに、心地よい香水の匂いが漂う。センスのいい匂いだ。
「ああ、僕も寝るかも」
「ダメよ、私を枕にだけはしないでね」そういって、離陸してほどなく香の軽い寝息が聞こえた。

スワンナプーム国際空港に定刻についた。香は食事も殆ど食べず、少しのワインを飲んで寝ていたといってよい。源太郎も同様に食事以外会話をすることもなく、寝ていた。一義とほろ酔いで目じりを下げた玲子は、ずっと会話を楽しんでいた。入国審査と税関審査がすべて終わり、製薬会社が手配した車に荷物をいれて市内のホテルに向かった。
「おい、暑い。早くホテルで足を伸ばそう。今夜は事務局の打ち合わせがある、と言っても飲み会だがね。玲子ちゃん付き合えよ。日本人ばかりだから、安心して」
「打田さんを誘ったらいかが」と玲子はまだほろ酔いで一義にももたれながら答えた。
「香さんは少し疲れたらしい。ゆっくり休んだ方がいい」
「大丈夫ですか、香さん」と一義が心配そうに聞いた。
「はい、大丈夫です。少し疲れただけです」あれだけ熟睡していたのだから調子が悪いわけはない。源太郎は香が役者だなと改めて思った。
「ホテルは、四部屋を確保したから、ゆっくり休んだらいい、玲子ちゃんと僕はアネックスだよ」
「何だそれ」一義が聞き返した。
「製薬会社が二部屋用意してくれたが、お互いにゆっくり休みたいだろ、だから部屋を追加したのさ。形式上、チェックインはお前と俺が製薬会社の手配した本館でして、お前と、香さんが泊まり、俺と玲子ちゃんはアネックスでもう一度チェックインだ。こっちは日本人観光客が多いから安心だ。本館は要人ばかりだから、すべて英語の世界。英語の得意な二人に頼むのさ。製薬会社がきても、香さんは僕の部屋の同伴だから問題ないだろ」
「えっ、私、源太郎さんと同じホテルなの」と玲子は聞き返したが、すぐに別部屋と解り、残念そうに一緒の部屋じゃないのという顔をして源太郎を見て、香に言った。
「打田さん、大丈夫ですよ。源太郎さんは安全パイですから。それより、休んでください」「ありがとう」香は、しっかりした足取りで、エレベータに乗った。

「チェックインしたよ。玲ちゃんは十六階、俺は十四階の喫煙フロアだよ。この国は少し物騒になったから、チェーンは掛けろよ」
「解っているわ。それより、何時に出るの」
「レセプションのことか、そんなものないよ。香さんを休ませてやりたかったから、口からでまかせさ。そうすれば、気兼ねなく休めるだろ、一義はほっといても、学会の資料整理だよ。あいつは仕事優先だから。そして本館はルームサービスが充実しているから、一義にはピッタリだ。俺なら無理だね。何で部屋で食事する必要があるのか」
「そうだったの。じゃ、私も羽のばしちゃお」
「ダメだね。玲ちゃんは酒癖悪いから、売り飛ばされるぞ」
「じゃ、全部お任せよ。遊び人の源さん」
「何だその言い方」
「一度だけ、病院に電話したことあったでしょ、その時、事務員さんが受話器をふさがないで、また女の人からよ、遊び人の源さんにご指名と言っていたの、だからそう呼ばれていると思ったの。相当遊び人なのね。源さん」
「馬鹿言え」
「私も遊ばれていたのね。まあ、仕方ないわ。じゃ、今回を最後と思って、遊びましょ。源さん」
「その言い方、やめろ。とにかく、シャワーでも浴びて、六時半にロビー集合。いいな」
「ハイハイ、源さん」
「やめろって。じゃ後で」

ロビーに時間通り降りてきたが、丁度日本人観光客が夕食に出かけるのだろう、皆おしゃれをして、集合している。その脇のソファーに玲子は座っていた。
「なんだい。その薄着は」
「えっ。ダメ」
「目のやり場に困るだろ。そんなに肌を露出したら、本当に売り飛ばされるぞ。まあ、若くて、美人だからいいか」
「ありがとう。おほめいただいて。源太郎さん」
「そうそう、それでいい」
「あら、間違ったわ、源さん」
「二人の時はいいけど、一義や香さんの前で言うなよ」
「言っちゃおうかな。昨日そーゆーことになって、と言って」ちょっと舌をだして玲子は微笑んだ。
「まったく悪ふざけがすぎる。大人をからかうな」
「どうせ子供だから、いいのよ」
「好きにしろ」

レストランに入ると、東南アジアのむっとする暑さと一転して、異常なほど冷房が利いている。玲子はカーディガンを羽織り、真っ白な首筋から両腕と胸元を覆った。ウエイターと源太郎が聞いたことのない言葉で話している。
「ねえ。何語なの」
「ああ、マレー語だよ」
「で、どんな話だったの。それとそんな言葉どこで覚えたの」英語は全くダメと言っていた源太郎の知らない部分を見てしまった玲子は驚いた。「幾らで売り飛ばすかの交渉だったのさ」源太郎は、舌を出して笑った。

「まさか、私を売り飛ばす話なの」
「安いから、断ったのさ」
「ねぇ。いくらだったの」
「言えないよ」
「そんな裏稼業をしていたの」真剣に玲子は聞いた。

「単純だな。嘘だよ。彼は玲ちゃんのこと若い嫁さんだね。って。あいつ、インドネシア出身だから、何番目の嫁さんだと聞いてきたから、三番目と答えた。そしたらやつは来月四人目をもらうと言って、自慢しやがった」
「じゃ、源さんは過去に二回も離婚したの」
「違うよ、イスラム教では、四人まで妻を持てるのさ。だからあいつ、すでに三人目も嫁さんがいるって」
「ふーん、そうなの」
「今は、公務員は一人だけらしいがね」
「ケンカしそうね。女同士」
「それがないのさ、二番目をもらうには、一番目の了解が必要で、三人目は一番目と二番目目の了解が必要なのさ。そして、みんな、均等に愛さないといけない」
「へー。タフなのね。それじゃ、身体持たないわ。源さんは大丈夫」
「俺か、大丈夫だよ」
「嘘よ、絶対無理。一人しか無理よ。香さん一人で、いっぱいでしょ。私遠慮します」
「試してもいないのに、いい加減なことを言うなよ」
「あら、そうなの。じゃ試します」
「まったく、玲ちゃんは何を考えているのかわからんよ」
「ふうー、酔ったかしら、絡んでやるー」

香の部屋の電話が鳴った。
「ハロー」香が電話に出ると一義からの電話だった。彼の電話を待っていたことを悟られないように寝起きのような声で答えた。
「起こしてしまいましたか。お身体大丈夫ですか」
「ええ。大丈夫です。飛行機で食事を取りませんでしたので、空腹と、暑さと、ワインで体調が崩れてしまったようです。今は、起きて夕食を取ろうかと思っていたところです」
「そうでしたか。でもいきなり刺激的なタイ料理はやめたほうがいいですよ。ルームサービスですましたらいかがですか」
「一義さんは、夕食すまされました」
「まだですが」
「ご一緒しましょうよ。私の部屋でかまいませんよ」
「いや、女性の部屋と言うより、源太郎の部屋じゃ、もし製薬会社から電話や訪問があったら困るでしょ。私の部屋なら彼らは私しか知らないから、誤解はないですね。私の部屋にしましょう。すぐでもかまいません」
「解りましたわ。私は出かけようと思ってましたから、これからすぐでもいいですか」
「いいですよ。お待ちしています」香はこのようになることはすでに予想していて、ドレスアップをしていた。鏡を見て身なりを確認しハイヒールを履いて部屋を出た。

一義の部屋のドアを軽く二度ノックした。チェーンの音と鍵をあける音がして、ドアが開いた。「元気そうですね。顔色もいいみたい。安心しました」医者の目で香を見て、診断した。香はどこも悪くはないから、当たり前である。香は女性らしさを強調したドレスで、大人の雰囲気で欠点はない。
「だめですよ。一人で、その格好でホテルの外に出たら危険ですよ。それより、食事は適当にオーダーしておきました。消化にいいものを選びました」
「ありがとうございます」
ほどなくして、ボーイが食事を運んできた。見ると、生野菜はないが、辛くもなさそうな炒め物や、スープそれと白いご飯があった。
「大丈夫ですから、少し飲みますか」と香はダメ元で聞いた。
「すこしならいいですよ。ウイスキーをお湯で割ればいいと思います」香はビールを飲みたかったが、言葉通りに頷き、一義が作ってくれたお湯割りで乾杯した。
「源太郎から連絡ありましたか」
「いえ、玲子ちゃんと楽しんでいるでしょ」
「しょうがないな」「それより一義さん心配ないの。源太郎さん手が早いわよ」
「わかっているよ。まあ、あいつは一人で収まる男じゃないし、今頃四人妻が欲しいなんて話をしているよ。まぁ、病気だよね。源太郎は」
「じゃ、私も遊ぼうかしら」一義は、初めてあった夜のことを思い出していた。そして、今まで聞きたかったことを切り出した。
「聞いてもいいかな」
「ええ、年齢と体重以外なら構わないわ」香は微笑んだ。
「源太郎とどんなきっかけで付き合い始めたの。あれからずっと親しくしていたの」
「いいえ、昨年暮れに突然、源太郎さんから言伝があり、お会いしたのが初めてでした。それから数回、私が帰国すると空港に迎えに来てくれて、光琳坊で食事するようになったの。だから、この前の交際宣言も私自身びっくりしました。驚かれたでしょ」玲子の話としっかりあっている。間違いない。
「そうだったんですか。あいつもマメだな」
「そうよ、一義さんには名刺お渡ししたのに、一度も連絡はなかったでしょ。源太郎さんの誘いにのれば、お会いできると少し期待しましたのよ」
「いや、連絡もしないですいませんでした」
電話が鳴った。
「一義か。源太郎だ」
「おお、何だ」
「香さんの所に電話したけど、いなかったのでお前に連絡した」一義は少しあわてた。その様子を見ていた香は、大丈夫といっていいサインを送った。
「いま、ここにいるよ。香さん。顔色も良くて、今食事したところだ」
「そうか、安心したよ。お前医者だからまかしたよ。いまおれたち帰って来たんだ。面白かったよ。玲ちゃん酔っ払っちゃって、大変だよ」
「お前、間違い起こすなよ」
「なにが」
「いや、何でもない」
「じゃ、おやすみ。そっちもよろしくやってくれ」
「電話、かわろうか」
「いや、おやすみと言ってくれ」