Jerry Emma Laura Piano

Mina, Dalida, Barbara, Laura, Lara....美人大好き! あっ、Mihoが一番好き

連休初日の富士山

2013年07月13日 | 写真の話

夜になると、富士山の山小屋の明かりが肉眼でも見える。深夜11時に、長時間露光して写真を撮ると、登山者の光の帯がはっきりわかる。登山することは悪くはないが、世界遺産の富士山にこれほどの人が登るのは考えてしまう。猫もなんとかであるが、ファッションで山登りをすることだけはやめた方がいい。ラッシュアワーのような登山者の光の帯。事故がないことを祈る。街の光が多少乱反射して、くっきりした写真ではないが、山の形が解ると思う。
Fuji201307132300


源太郎(8)

2013年07月13日 | 腰折れ文
橋本の人脈は、源太郎も十分解っている。この薬の世界で彼を知る医者や事務長は少ないが、裏ですべてを理解して仕切っているのは彼だ。しかも、彼は表に出ない。普通にサラリーマンのような顔をして、色々な情報をつかんでくる男だ。彼の父親は、源太郎の父親と懇意にしていたが、一昨年亡くなった。先代の後釜には弟が就任し、彼は今でも営業部附の肩書を変えていない。彼はJE医薬という会社の大株主であるが、決して弟のやることには口を出さなかった。
「篤さん。もう名刺交換終わりましたか」橋本は、源太郎より五歳年上だが、何時の頃からか篤さん、源太郎さんと呼び合う仲だ。
「ああ、皆名刺の肩書を見て挨拶しているから、俺の名刺はゴミ箱行きさ。そんな奴は俺は相手にしないけどね。ところで彼女も来ているのか」
「合わなかったかい。一義と一緒にいるのがそうさ」
「あの娘か。いい女じゃないか」
玲子は、二人の話を脇で聞いているだけだった。突然、篤が玲子に語りかけた。
「玲ちゃん。源さんに口説かれたかい」突然真面目な顔をして聞いたので、「ええ」とだけ玲子は答えた。
「そいつはいい。こいつに何とかしてくれと言われたけど、ちゃんとやっているじゃないか」といって、源太郎の肩をポンとたたいた。そして「しかし、騙されちゃったか。売り飛ばされなかったからよしとするか」売り飛ばすとは本当のことか、源太郎も冗談で言っていたと玲子は不安になった。
「冗談だよ。いい嫁さんになるなこの娘は」といって篤は右手をあげて振り向き会社のブースに向かって行った。その姿は、あの店で別れ際の一義と源太郎と同じだと玲子は思った。
「玲ちゃんホテルに戻ろうか」といって源太郎は会場を出た。玲子も続いた。

玲子は、源太郎の部屋に入ったとたん、ハイヒールを片足ずつ、足を振って脱ぎ、ベッドメイキングされているカバーの上に大の字になった。「あぁー、疲れた」「玲ちゃん自分の部屋に行ったら」と源太郎が言うと、頭を左右に振った。「それより、のどが湧かない。ビール飲みたい」と玲子は催促した。そう言うと思い、源太郎はグラスを二つテーブルに起き、冷えたビールの栓を抜いて注ぎ、灰皿を中央に引き寄せて煙草を置いた。玲子は起き上がってベッドの端で足をぶらぶらさせて、手を伸ばしてグラスが欲しい仕草をした。
源太郎はグラスを渡して、テーブルをベッドに引き寄せた。玲子は一人で乾杯と言って呑み始めた。源太郎が煙草に火をつけると反対の手を伸ばして、それも要求した。
「ねえ、源太郎さん。橋本さんが調べてくれたの」
「ああ、僕も驚いたけど、彼の情報力はすごい」
「へぇ。私のことも調べたの」「調べてもらえば良かった。こんなに我がままだとは知らなかったな」源太郎は玲子のおでこを突いて笑った。
「じゃ。打田さんは源太郎さんの妹ってことなの」「そう昔、親父のところで働いていた看護婦さんとの間に出来た子供さ」
「どうして解ったの」
「調べるのは大変だった。結局あってから八年かかった。篤さんには感謝だよ。打田さんに初めて会った時、制服のネームプレートが打田だったので何かピンときたのさ。普通内田だろ。打撃の打田って今まで知っていたのは看護婦の打田さんだけだった。その人によく病院で漢字を教えてもらったんだよ」
源太郎は、子供の頃学校から病院に直行して家には帰らなかった。そして優しい看護婦の打田にかわいがってもらった。当時母親は父親と仲が悪く、何時も喧嘩していた。当時の思い出を煙草をくわえて、時間を追って思い出しながら玲子に語った。
「そうだったの。それで」「ある日、打田さんが病院を辞めてしまった」「そうか、赤ちゃんが出来たのね。その子が香さん」
「ああ。あの人はその後どうしたのか。わからなかった。古巣の看護婦に聞いても誰も知らなかった。逢いたかったね」
帰国後、源太郎は篤にこの話をした。篤は、色々なツテを頼って探したが、結局わからなかった。昨年の春先、神奈川の三崎口の駅を降りた篤は、葬儀案内の看板を見て慌てて源太郎に電話した。電話口に出た源太郎は、すぐに京急電車に乗って向かった。
源太郎が斎場に着くと、白い花で飾られた祭壇に、昔お世話なった薫さんの遺影があった。脇に、ハンカチで時々目を覆いながらも、しっかりしようとする喪主の香がいた。
香は、今も源太郎が兄だとは知らない。源太郎が、駆け寄り、香にお悔やみを言った。香は源太郎が突然現れて一体何が起きたのか、時間が止まった。そして、なぜ母の葬儀を知ったのか、聞いた。源太郎は、病院のネットワークで連絡があったとごまかし、ここにきて、初めて香のお母さんの葬儀だとわかったと話した。その日はそれで終わった。

翌月の立ち日に、源太郎は子どものころ好きだと聞いていた夕顔の花を花屋に探すように頼み、その花を持って香の家に行った。香は一人で家にいた。花束を見て、香は驚いた。そこには、母が好きだった夕顔の花を持った源太郎がいる。なぜこの花を源太郎が持っているのか、香は理解できなかった。源太郎はたまたま花屋にこの花があり、綺麗だったからと言って、花を香に渡し、何も知らない顔して、仏前で手を合わせた。
香は、花を生けると母に向かって、この時期には珍しい、好きだった花よと言って供えた。

香が差し出したお茶をいだだき、灰皿の無いことに恐縮する香に、源太郎は大丈夫という仕草をして、あのアンカレッジでの話を仏壇に語りかけた。そしてやっと、香に笑顔が戻ったことを喜んだ。香は、あの時の航空会社から今の会社に変わったことを話し、一義が元気かと尋ねた。

「今年の春は一周忌だったのね。だから一義さんに合わせたかったの」やっと、玲子はことの真相を理解した。
「あの旅の話をすれば、彼女は明るくなる」そう思ったと源太郎は玲子に言った。そしてその時あえて薫が亡くなったことは話さないと決めていたことも話した。
「玲ちゃんには、これで全部話したよ。今度は、玲ちゃんの遍歴を教えて」と源太郎は話題を変えようとした。
「まだ、わからないことが幾つかあるは、それを教えてくれないと、私のこと話さないわ」
「そう。玲ちゃんの遍歴を聞いても、ヤキモチは起きないし、ま、いいか。」
「誤魔化さないで。どうして山本先生と付き合わせたいの」
「付き合うかどうかは解らない。だから、俺はお膳立てしただけ。大人だからね二人は」
「ふん。そうなの」玲子はまだ何かあると思っていたが、この話は今夜、篤に会った時、彼からそっと聞けばいいと思った。
源太郎は、話題を変え、流石に今日のパーティーにあの薄着のドレスでは場違いと言って、予約しているので、美容院とレンタルドレスの店に行こうと玲子に話した。玲子は、源太郎に恥をかかせては申し訳ないので、その話に従った。

一義と香はそれぞれの部屋に戻る前に、ラウンジでお茶を飲んだ。そして、源太郎の初めての旅の話題で盛り上がった。
「一義さん。源太郎さんと玲ちゃん。今朝の様子変じゃなかった」と旅の話の終わりかけに香が言った。一義は無反応だったので、香はその理由を話した。
「あのスーツに、朝からあの靴はないと思うわ」「そんなことはないだろ」と一義は否定した。「でもあの子煙草は吸わないのに、源太郎さんと同じ香りの臭いがしたの、夕べなら、源太郎さんの煙草の匂いがしてもおかしくはないわ。でも朝よ」一義は香の話を聞きながら、もっともだと思ったが、交際宣言した彼を疑うのはいかがかと思い、やはり否定した。「考えすぎだよ。源太郎はいつも煙草を吸っているから、移り香があっても不思議はないよ。それより、彼奴を疑っているの」「そんなことはないわ。でもそう思ったから、一義さんに話したの」大丈夫だよと言いながら、待ち合わせの時間を決めて、それぞれの部屋に戻った。

一義は、源太郎と香がぎこちなく会話すること、そして玲子といく度となくあっていることで、まず香の指摘は間違いないと確信した。それにしても、女の感性は恐ろしいとも思った。少し時間あるので、一義はシャワーを浴びて、糊の効いたワイシャツに袖を通し、院長からもらったカフスをつけた。カフスは七宝焼きで、薄い黄色の花模様だった。

香は、母の形見の着物を着付けして、さっきとはまったく趣の違う姿になっていた。裾には可憐で、少し寂しさが漂う夕顔の花が彼女を引き立てた。日が傾き、夕日が窓辺から差し込み、着物は一段と美しさが増した。姿見で帯を確認して、部屋を出た。エレベーターホールに行く途中、何人かの外人が、その極東の美女を立ち止まって、賛辞を贈っている。香は軽い会釈をしてそれに答えた。

香がロビーに現れた時、ロビーにいるすべての人が、和服姿の香を見つめていることに、いささかも、動じることなく、中ほどの一義が座っているソファーのところに真っ直ぐ向かった。綺麗だと一義は心底感じた。着物の着こなしといい、着物センスといい文句はない。一義は立ち上がり、香を迎えた。

玲子は、源太郎の言われるままに、濃紺のイブニングドレスに包まれ、昨晩の彼女とはまったく違う女性になっていた。若さを強調するわけでもなく、胸元のサファイアのネックレスが真白な胸元のに輝き、素晴らしいコントラストだ。源太郎は満足して、「これなら、高く売れる」と言って、笑った。玲子も鏡を見て、腰回りを源太郎に見せて、「いいでしょ。抱きたい」といたずらっ子の目をした。

源太郎は、ロビーに待つ香と一義をみて、すぐに気がついた。香の着物の柄から母の形見だと。そして、一義のネクタイピンとカフスがお揃いであることを。彼が親父からプレゼントを一義に贈ったことは知っていたが、これですべて間違いないと改めて確信した。