Jerry Emma Laura Piano

Mina, Dalida, Barbara, Laura, Lara....美人大好き! あっ、Mihoが一番好き

Musica Vita Italia

2013年07月11日 | 毎日の話
Musica Vita Italia
毎日暑い日が続く。箱根山の西と東側では明らかに空気の流れ方が違う。朝顔は今朝三輪咲いた。 紹介が遅れたが、イタリアの音楽雑誌の二号は、可憐なGigliola Cinquettiの特集。ページをめくると、愛くるしい彼女の白黒写真に魅入ってしまう。


源太郎(7)

2013年07月11日 | 腰折れ文
【源太郎】登場人物や設定はすべて架空です。

源太郎は、カーテンを開けて朝日を入れた。南国特有のヤシの木が街並みのあちこちに見える。
「起きろよ。玲ちゃん」
「えぇ。もう朝なの。まだ眠たい」
「どんだけ飲んだんだよ。起きてシャワー浴びて、本館に朝飯食べに行くぞ」
「食べたくない。それよりお水、一杯頂戴」源太郎はミニバーから新しいグラスを取り、アクアのボトルのキャップを外すと、半分ほど注いで、シーツにくるまっている玲子の顔の前に差し出した。玲子はシーツの下から手を伸ばし、グラスを受け取ると肩までシーツを引き寄せて、枕を支えに起きあがった。そして、グラスの水を飲み干して、グラスを左手に持ち替えて、右手で髪の毛を直している。
「もう一杯いるかい」
「うん」グラスを玲子は差し出した。源太郎は何のこだわりもなくボトルをもってそばに行った。
「あまり見ないで。はずかしいから」
「なにをいまさら。昨日の姿こそ見せられないぞ」
「あぁーん、化粧道具は部屋だわ、ここじゃ着替えもできない。部屋に戻るわ」
「昨日のドレスじゃ、朝おかしく見られるぞ。そこにポーチと着替えを取って来たから大丈夫。そして部屋に泊まらなかったとメイドに思われないよう、(ノブに起こさないでと)表示してきたから大丈夫」
「玲ちゃんのスーツケースはあけっぱなしだし、着替えはパンツスーツにしたよ」
「やだ。みんな見られちゃったの。もう何もかも知られちゃった。でもありがとう」
「ちょっとぐらい隠してほしかったな」
「香さんのようにすればいいのよね。でも源太郎さん昨日の話、信じていいの」
「ああ、でも二人には絶対内緒だ」
「私達が、こうなっちゃったのも言っちゃダメ」
「話したければ話していいよ。どうせ香さんは僕に興味はないから」
「へー。本当は少し残念なんでしょ」玲子はシーツを巻き、少し引きずりながらバスルームに入って行った。源太郎はベットカバーと枕を戻し、テーブルの酒宴の残骸を丁寧にかたづけ、玲子が身支度する空間を確保した。バスルームからはシャワーの音が消え、代わりにドライヤーの大きな音が聞こえてくる。

「気持ちよかった。さっぱりしたわ」玲子は源太郎の視線を感じながらも、着替えを終えた。でも、化粧に取りかかったとき、「見ないで」と言った。源太郎は窓を開け、朝だと言うのに生熱い風が吹いるベランダにでて、煙草を燻らした。

部屋から、ガラス窓を叩く音がした。振り返ると先程まで大人の女だった玲子が、すっきりとしてスーツ姿で微笑んで、普通の女の子に戻っていた。窓をあけ部屋に戻ると、玲子は煙草を吸いたいと言った。
「玲ちゃん。煙草吸うの」と聞くと、本当はベッドで吸いたかったのと言ったが、まねごとのように火をつけて、少しむせたがおいしそうに吸っている。玲子のまた新しい一面を発見した。

「普段は吸わないのよ。でも源太郎さんのおいしそうに吸う姿をいつも見ていたから、ちょっと練習したの」と微笑んだ。「一義の前では吸うなよ」というと、「健太郎さんだけ知っている秘密があっていいよね」といたずらな目を輝かせた。玲子はパンツ姿なので、昨夜のハイヒールでも様になっていた。ヒールを履くと源太郎と並んでも様になる高さで釣り合った。

「さて、行くか」玲子は半分も吸っていない煙草を丁寧に消した。フィルターにはうっすら口紅が滲んでいる。ドアを閉めて、エレベータホールに行く間、幾度か玲子は源太郎と手をつなぐことを要求したが、源太郎はその手を払っていた。ちょっとしたタイミングで玲子の腰に手が触れた。玲子はドキッとして、源太郎を睨んだが、源太郎は笑って、「いい腰だね。もう一度触ってみたかったのさ」といって、感触の余韻を楽しむように言った。「馬鹿じゃないの」と言いながら、玲子も余韻に浸っていた。

「おはよう」
「おはようございます」香が一義と一緒のテーブルで朝食をとっていた。
「香さん、調子はどうですか」源太郎が声をかけ、少し離れた位置から玲子が頭を下げて挨拶した。「ええ、大丈夫です。昨晩は一義さんにご迷惑をかけました。食事も昨夜御馳走になったのよ」「良かったね。僕はちょっと飲みすぎで、はしゃぎすぎました」

「玲子ちゃん、大丈夫でした」と香が玲子の姿を見ながら声をかけた。女の感覚は鋭い。玲子は悟られないように微笑んで、「源太郎さんに期待したんですけどね。私みたいな子供は相手にしてくれなかったんです」香は、少し安心したように「そう。残念ね。今日から私に源太郎さん返してね」と笑った。
源太郎は、全く女は解らない生物だと感じた。一義は新聞を読みながら、特段この女たちの腹の探り合いに全く興味を示していない。「打田さんこそ、私の山本先生取らないでね」と玲子は反論している。

「皆さん、おはようございます」と言って、朝食中のテーブルに寄って来た東京営業所長の大石が挨拶した。一義は、彼を新聞越に見て少し頭を下げた。源太郎は立ちあがり、招待のお礼を述べている。大石は、連れの女性たちの値踏みをしていたようで、明かに源太郎の同伴者が玲子だと解釈して帰って行った。
「どうも、彼らは好きになれないな」嫌そうに一義はつぶやいた。
「まあな。俺だって同じだけと、事務長としてはこれが仕事さ。ところで今日の予定だけど、11時にロビー集合、昼食会の後、学会会場で基調講演と幾つかの発表。一義は二番目だよ。それから名刺交換会、そして夕食会だ。忙しいけど頼むな」
「ああ」
「ドレスコードは」と香が聞いた。
「パーティー以外はスーツでいいよ。夜はそれなりだ。特段ドレスコードは決まっていない」と源太郎は香にむかって答えた。
「それでね。さっき大石のやつ誤解しやがった。一義の連れが香さんで、俺が玲子ちゃんといっていった。まあそれならそれでいいやと思ったけど、作戦変更だ。それで行こう」一義は別に(かまわんよ)という顔をし、香も無言で了解した。
「えぇ、私源太郎さんとなの。約束違うわよ」玲子が頬を膨らめた。すかさず香が「そうよね」と相槌を入れたが、源太郎は玲子にウインクして「夜のドレス買ってあげるから」と子供を泣きやませる手段のように言葉をかけた。玲子は源太郎の思惑を聞いているので、一応逆らってみたものの、源太郎の決めたことと思い、いやいや同意するように見せた。
「一義さん。本当にいいですか」と香が再度一義に聞いたが、何も疑いせず「源太郎がよければいいよ」と答えた。

少し早めに、本館のロビーに玲子は向かっていた。すると香から声をかけられた。香はすっきりと美しく、美容院から出てきたようにすべてが完ぺきだった。そして柑橘系のすがすがしい香りがした。「玲子ちゃん。少し話してもいい」と香が言った。二人はロビーのソファに座って話し始めた。

「ねえ。玲子ちゃん。昨日の夜は何にもなかったの」その言葉に玲子はちょっと驚いた。香は気がついたと思った。「なんにもなかったんですよ。私ちょっと残念ですね。打田さんの彼、取りませんよ」と茶化した。「それより、打田さんも昨日一義さんと一緒でしょ。何かあったでしょ」と逆に質問した。
香は少し間をおいて「心配。玲子ちゃん」と答えた。「打田さん。本当は山本先生が好きなんじゃないの」玲子は、ストレートに聞き返した。香は否定せずしばらく笑って「どうしてそう思うの」と言った。玲子はやっぱりと思い「ええ。この前の食事会の帰り道、山本先生はずっと打田さんのことを聞いていたのよ。源太郎さんとの付き合いは何か変だなと思っていたんじゃないかと思って」と考えを示した。
香は、玲子の洞察力に驚いた。そして「御想像の通りよ。源太郎さんとはお食事だけで、お付き合いしているとは言えないわ。でも源太郎さんは嫌いじゃないわよ」と突然吐露した。玲子は香の言い方があまりにもずるいと感じ、「じゃ、私があの後、山本先生とそういう関係になっていたら打田さんどうします」「そんなことないでしょ」少し怒ったように即座に香は答えた。玲子は、香は半分正しく、半分間違っていると思った。
「じゃ、私、源太郎さん好きになってもいいの」玲子はどのくらい香が解っているか試してみた。「源太郎さんはやめなさい。若い子だと遊ばれちゃうわよ。女の人で苦労するかもしれないわ」香は、源太郎のことを殆ど全く解っていない。玲子は初めて彼女に勝ったと思った。

一義の発表はスマートで、他の発表者のありきたりで適当な発表とは異なっていた。多くの聴衆は一義に称賛の拍手を送った。名刺交換会の会場では、香は一義の一歩後方に常にいて、多くの国内外の人達と名刺を交換した。香は、挨拶といい、その仕草といい、もう完全に一義のパートナーになっている。方や源太郎と玲子の周りには、日本の製薬会社のプロパーが入れ替わりに挨拶に来た。
「大和さん。隅に置けませんな。紹介してくださいよ。お若い奥さまですね」
「違いますよ。一番下の妹ですよ。玲子ご挨拶しなさい」と玲子に挨拶を促した。
「はじめまして、いつも彼がお世話になっています」と切り返した。
「えっ。彼。でしょ。大和さんやっぱり、妹はおかしいですよ」「ええ、内縁の妻です」と源太郎にウインクして玲子は即座に答えた。源太郎はその調子でいいと思った。
「やっぱり。奥様、今後大和さんとのお付き合いひとつよろしくお願いします」といって戻って行った。入れ替わりに他の製薬会社の男が寄って来た。
「源さん」
「おお、服装が違うので誰かと思ったよ」源太郎の声が弾んだ。
「あれ、連れてきてますね。彼女」玲子はすかさず「いえ、違います。妹の玲子です」といった。
「ばれてますよ。玲ちゃん」玲子はその声をどこかで聞いたことがあった。
「覚えてないかな。何回か新橋の店で・・・」
「あっ。橋本さんですか。服装が違うので誰かと思いました」急にその場は葵に変わった。
「源さん。やっぱりこの娘が本命ですか」源太郎は黙っている。
「橋本さん。私みたいな娘、いっぱい知っているの」
「ああ、源さんは、あの店に来る時は必ず違う女の子を連れてくるんだよ」
「本当なの」
「数知れないよ。でもね。近頃来る時は、一人で来るか、玲ちゃんと来るかのいずれかさ。どっか違う店で他の女の子あっているのかも知れんが、まあないね。こいつ不器用だから」