人生エクソダス

なんてことのない日々のこもごもをつらつらと書き連ねたり連ねなかったりする。

楽しかったやる夫スレを思い出す 14 やる夫の魔王の道

2020-01-01 00:31:57 | やる夫スレ

 苺飴を売り歩く行商人のやる夫はあるとき翠星石とやらない夫に決闘沙汰から助けられる。やる夫は定住できない環境から二人の道中について行き露天売りをしようとする。だがこの二人は「魔王軍」の所属だった…。

 というところから始まる。魔王軍として統率するようになり治安は収まりつつあったものの、その構成員の魔物達の中にはいまだに人食いが隠れ住むこともあり、人間であるやる夫の身の安全のためにコックとして召し抱えられることになる。魔王軍の食糧事情は、でっていうによる作物供給によって優秀なものの調理という概念が存在しない壊滅的な調理技術だったために、食事というものを好意的に捉える存在は皆無だった。そこでやる夫は行商をしながら培ったあちこちでの郷土料理からアレンジや再現によって魔王軍の料理というものを革新していく。それは農作物を好奇心から改良を続けるでっていうとの二人三脚なところもあった。

 そこで迎え入れられた魔王・L(デスノート)※Lと呼ばれることはほとんどなく魔王ともっぱら呼ばれる、竜の生き残り・新城直衛、剣の達人・阿部高和、熟練の魔導師・ジェイルスカリエッティ、絶大な力を持つ水銀燈などの面々と、人間の新入りという扱いながら温かく迎え入れられた。やる夫はそこでかつて存在し今は失ったと思っていた家族の温もりを思い出す。その関係性の変化は、これまで頑なだった者達の心境も変化させていくことになる。

 こういうところに面白さがあった。連載が2011年というやる夫スレとしてはちょうど全盛で、ヒロインにローゼンメイデンの翠星石、兄貴分のやらない夫、そして包容力のある大人の女性として水銀燈が配置されるキャスティングはTHE鉄板。そして職業軍人として使いやすい新城直衛、大人の男としての姿を見せる阿部高和というのもまた鉄板。煽り倒すような口調ながら実は思慮深い存在としてでっていうを使うというのも非常に手堅く安心して見ていられる。かなり珍しくリリカルなのはからジェイル・スカリエッティと彼が生み出したナンバーズ(12人の"姉妹")が登場する。これは非常に非常に珍しく、他の作品で出ましたっけ?「やる夫達は王道を突き進むようです」の他に?…のレベル。

 だがそれらのキャラクターの人格描写・背景設定がしっかり描写されているので、自分の知らないキャラクターだからといって投げるべきではない。読んでいくうちに腑に落ちていくからだ。そうした描写の深さがあるから、ギャグに笑うことができるし、シリアス展開にのめりこめるし、感極まった場面で目頭を熱くすることができる。

 料理人なのに「やる夫の魔王の道」とは、はて…というところが作品のネタバレだったりする。場面をひっくり返すとかではないが、色々察しながら読むことになるだろう。



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