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「タブロウ・ゲート」というのは鈴木理華さんが月刊プリンセスで不定期?連載している漫画。鈴木理華さんはC-NOVELSつまり朝日ソノラマの小説の挿絵をされている人で、漫画を描くという印象はあまりなかった。が探せばいろいろなイラストレーターの方が漫画を連載されていて、その体裁も思いのほかコマ割りをしっかり配置したオーソドックスな漫画を描かれる方が多い。
この漫画は盾濱(横浜?)に引っ越してきた少年であるサツキが、分厚い本が突然窓ガラスを破って飛び込んできたと思いきや、それを回収しようとする少女と青年、そして彼女たちを襲う長髪の剣士という序盤からクライマックスな展開から始まる。その青年達は”タブロウ”と呼ばれるタロットの大アルカナをモチーフにした化身のような存在で、本来なら本、つまり窓ガラスを突き破って飛んできた分厚い図鑑の絵として収蔵されているが、本の管理者がそのタブロウたちの真名というべきか本来の名前と言うべきか…を呼ぶ(本から”タブロウを剥がす”)ことによって管理者の従者として召喚される。しかし事故によって本から半数近いタブロウが散逸つまり脱走しており、それらを呼び戻し契約下に置くために、少女レディが銀髪の剣士と戦いを繰り広げていたのだ。
という出だしから物語が始まる。
脱走したタブロウたちは契約下に置かれている時と性格が異なる。というよりかなり地に近い性格をしていて、タブロウは管理者に真名を教え、そのタブロウの印象を問い、それによってタブロウと管理者との間で契約が成立する。そしてその印象によって、つまり管理者がタブロウをどう考えているかによって性格が非常に変わる。
例えばレディと登場したタブロウ・太陽のアレイスターはレディの印象が”天上に位置し何者にも怯まぬ剛力の炎”という印象を与えられた事で陽気で底抜けに明るいみんなのお兄ちゃんとなる一方、サツキの印象が”万物の父 気高き静寂の王”だったことで理知的で紳士的ながら敵に一切の容赦のない冷厳たる存在となる。タブロウ達はそれぞれに特殊能力を持っていて、アレイスターの場合炎を拳に纏わせるという草薙京みたいな戦い方をするが、その印象によって戦闘力が変わるので、能力的には互角だが対峙した時の脅威は圧倒的にサツキ版のアレイスターの方が高いなど、タブロウという精神的な存在という不定形なところを個性として表現している。タブロウの容貌もまた、アレイスターやエリファスなどの人間の容貌だったり、太陽のモチーフというかハンドルというかという無機物だったりする。
割とジョジョっぽいというか、擬音の表現は割とジョジョい感じがするし、タブロウ同士の能力バトルと言うところもジョジョっぽいと言えるかもしれない。しかし召喚者によって召喚される者の個性が変わるというモチーフは女神転生というかアトラス全般のモチーフに近い(とはいえペルソナってジョジョだよねと草創期は言われていたらしい)。
タブロウたちの名前は全部が全部そうかは分からないが、だいたいオカルト・神智学に関係する人物から取られている。例えば↑のアレイスター(太陽)はアレイスター・クロウリーだし、月のエリファスはエリファス・レヴィだ。
1巻がキャラクターの顔合わせ、それもタブロウ管理者レディとタブロウの”太陽_THE SUN”と”月_THE MOON”の顔合わせとなる導入部だが、2巻以降対立関係となる謎の女性イレイズが登場し、タブロウを狙う存在との暗闘が始まる。そこからタブロウを制作した創造主グランドマスターの存在とサツキとの関係性や、明確に敵として存在する”星_THE STAR”が登場する。
サツキがタブロウ管理者でもないのにタブロウを剥がすことができる理由がグランドマスターからの血統というあたりが出てきた頃、同時期にワンピースのルフィが貴種流離譚の主人公的な要素があったことから結局主人公はえらいとこの血筋かあという論調があってスレッドが上がったこともあって、「タブロウ・ゲート」もそこをなぞるのかあと少し落胆した頃もあった。タブロウを剥がすことができる理由が想像主の血筋ならまあ確かにそうか、という意外性というところではそこまででもない理由だったからだ。
それも大した問題にならなくなったのは、後にタブロウから人間になった存在がいたこと、そしてその人間になる方法がグランドマスターの心臓を食うというもので、イレイズと”星”がそのためにサツキのお命頂戴したい感じになってきたことから対立軸がさらに際だったからだ。敵が明確に目的があり、その目標達成のために主人公の命を狙うという単純かつわかりやすい危機的状況になったので、離散したタブロウを探す、というグランドツーリングになりそうなシナリオ展開をRTAに変えた鬼手だったと思う。
最新巻では遂にサツキの命の灯が消えようとしている中、レディの仄めかされながら確証を得ない出自についての秘密が暴かれ、それが結果的にサツキ一行のピンチをさらに加速させるというドラマティックな展開になったので、23巻という長期連載の今がまさに怒濤だ。
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