東大阪市加納 日蓮宗 妙政寺のブログ〜河内國妙見大菩薩、安立行菩薩、七面大天女、鬼子母神を祀るお寺!

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河内の民話 「うしのとき参り」

2016-12-01 21:35:08 | 河内國の昔話
こんばんは。

今回も河内の民話の紹介です。
写真は加納の鎮守「宇波神社」の本殿です。




「うしのとき参り」

 月もなく冷たい夜風は、肌を刺すように感じられる初冬の真夜中のことです。
 小加納(こがの)で開かれた賭場(とば)で日ごろせっせとためたお金を勝負に負けてしまった宇之吉さんは、しょんぼりと肩をすぼめて、油屋さんの倉を曲がろうとした時です。宇波神社の参道を、ゆらゆらと揺れながら近づく火に気がつきました。あたりは、異様な殺気に包まれています。ぎょっとして立ち止まり、目を凝らして見ていた宇之吉は、さっと倉陰に身をかくしました。
 近づいてきたのは、白い着物にざんばらの長い髪、額には、火のついたろうそくが二本、口が耳まで裂けたすさまじい形相を、その火が映し出していました。これがうしのとき参りをする女の姿なのだということを、宇之吉さんは知っていたからです。またこんな言い伝えのあることも―
 “うしのとき参りをする姿を見られてしまうと、のろい殺そうとする願いは神様にききとどけてもらえないばかりか、逆に、うしのとき参りをした者の命がなくなってしまうというので、この姿を誰かに見られたと感づいたら、今度は、姿を見た人をのろい殺すのだと……”
 宇之吉さんは全身の血がひいていく思いでした。見つけられはしないかと必死で息をひそめていました。
 風を切るように駆けてきた女は、まもなく神社の鳥居をくぐり拝殿へ―。前には黒い大きなものが横たわっているのが灯ろうのあかりに照らしだされています。拝殿の黒いものは牛で、毎夜一匹ずつふえ満願の日に七匹、その牛を飛び越えなくては願いは聞き届けられない、という言い伝えも宇之吉さんは思い出しました。女はその牛を軽々と飛び越えて一心に拝みます。
 誰かをのろい殺そうとする世にも恐ろしいうらみの深さ、女の執念の強さを目のあたりにして歯の根も合わず震える宇之吉さんです。
 やがて、祈り終えた女は、お社の奥の繁みに消えていきました。
 「カーン カーン―」 五寸クギを木の幹に打ちつける音を背に、宇之吉さんは夢中で駆け出しました。
 それからちょうど三日目のこと、クギを胸に打たれた人形が見つけ出され、村中の話題になりました。
 でも、日ごろ口の軽い宇之吉さんでも、この話だけは誰にも言えませんものね。
コメント
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